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前頭は140万円、大関は250万円、では横綱の月収は…? 力士の“収入事情”の実態に迫る

『スポーツとしての相撲論 力士の体重はなぜ30キロ増えたのか』より #2

2021/08/01
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 ただ、それでもオリンピックに出場するような競技に取り組む選手の大半が企業に所属し、サラリーマンと同程度か、場合によっては低水準の所得しか得られない実情があることもまた事実です。一人前の選手が等しく1000万円以上貰えるスポーツは野球・サッカー・ゴルフ、あるいは競馬や競艇などの公営ギャンブルに限られているのは特筆すべきことだと思います。毎場所会場が満員になり、地上波で安定して視聴率が10%を超えるコンテンツは大相撲だけなのですから。

幕下か十両かで給与が10倍以上違う

 続いて、幕下以下の力士になるとどうなるか見てみましょう。彼らは給料がないのですが、場所ごとに次の額の手当てが付きます。

 幕下:16万5000円/場所  99万円/年
 三段目:11万円/場所   66万円/年
 序二段:8万8000円/場所 52万8000円/年
 序ノ口:7万7000円/場所 46万2000円/年

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 大相撲の世界は衣食住が提供されるので、この額だけで生活せねばならないというわけではありません。ある意味で恵まれているとも言えますが、これでは一家の大黒柱になることはできません。十両以上の力士と比べるとその差は歴然としているのです。見ての通り、いわゆるサラリーマンの大半が得るような所得水準ではありません。1000万プレイヤーか、フリーターレベルか。それが大相撲の世界の厳しさと言えるかと思います。

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 それゆえ、幕下上位の取組は苛烈を極めます。誰もが十両になりたくて、必死なのです。幕下力士が十両になりたいのと同様に、十両の力士はその地位を手放したくありませんし、十両から落ちてきた幕下力士も目の色が違います。給与が10倍以上になることももちろん大きいのですが、力士として一人前になることは誰もが目指すものです。相撲としての完成度は幕内や十両の方が当然上ですが、この番付にしかないガムシャラさがあるのです。不格好なところもありますし、観客数も上位と比べるとそこまで多くはありませんが、幕下の相撲を私が多くの方におすすめしているのはこういう理由からなのです。