引退力士たちのセカンドキャリア
一人前の力士はサラリーマンと比べるとかなりの額を稼げますし、一定の基準を満たせば、引退後は年寄株というものを取得して相撲協会に親方として残ることができます。ただ、その枠が105しかないために親方になれるのは1学年平均で3人程度です。言い換えると、その3人以外は相撲界とは異なるセカンドキャリアを歩むことになります。
しかしどのスポーツでもそうなのですが、彼らのほとんどは子供のころからスポーツ一筋なので、引退後はどのような職業を選ぶとしても未経験から始まります。また、ある程度高齢かつ未経験で就職することになるため、給与水準は相対的に低めであることも事実です。
十両以上の経験が長ければ、引退後に所得が下がっても現役当時の貯金があります。生涯年収ベースで考えた時に、十両以上での在位期間がどのくらいあれば生涯サラリーマンの方よりも高くなるかを算出したところ、およそ5年程度必要だということがわかりました。
実はこの5年という期間は、奇しくも年寄株取得の条件である「十両以上:30場所」に一致するのです。言い換えると年寄株取得の条件を満たすレベルで結果を残さなければ、大相撲の道を最初から断念してサラリーマンになったほうが良いということを意味しています。
大相撲で得た有形無形の財産が身を助けることも
収入という意味で考えると夢もある世界ですし、スポーツ界では給与水準も高いと言えますが、トップクラスには水をあけられていますし、実力があっても生涯をトータルで見ると収入面から大相撲の世界を選ばないという道も現実的に考えるべきなのかもしれません。
ただ大相撲の世界での頑張りや人間的な成長、そして人脈といった有形無形の財産が身を助け、セカンドキャリアで大きな花を咲かせることもあります。ある方から聞いた話ですが、最高番付が幕下上位だった元力士のちゃんこ屋さんは繁盛するのだそうです。現実的な打算から大相撲を選ばないのも一つの生き方ではありますが、このような話を聞くと大相撲の門を叩くことがその人の可能性を広げているのではないかと感じます。
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