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「既得権益を打破」という便利な言葉

 河村たかしの主張はひとことで言うと「既得権益を打破」。この言葉は便利です。役所や市議会を「既得権益」と設定すれば、あら不思議、言った瞬間からその人は庶民派となるからだ。気さくな人になる。これは敵を作って煽る政治手法でもありますが、小池百合子が初めて都知事選に出馬したときもこの手法でした。河村たかしが応援に駆けつけていたのも納得です。

「既得権益を打破」は菅義偉首相も掲げている。首相就任早々に携帯電話の値下げを訴えた。しみじみしてしまうのは政治家が既得権益打破と叫び続けた結果、「損得」の話しかしなくなったのである。しかし河村たかしは照れずに「損得」の話を言ってきた。ウケるからだ。気さくはポピュリズムと相性がいい。

 では「気さく」の成果は出たのか?

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《市民税5%減税などを実現するも「何をやったか考えても、特にないのがこの12年」と市議からは容赦ない批判もあがる。》(2020年12月17日・朝日新聞デジタル)

 さらに次に、気さくな政治家の裏に潜む怖さに注目したい。

ベラルーシの大統領との共通点

 実は金メダル事件の直前に私は河村たかしのことを考えていた。というのも東京五輪でベラルーシの陸上選手が亡命した事件があった。あの件でベラルーシのルカシェンコ大統領のことを調べたら、大統領は五輪チームに対し「ハングリー精神が足りない」などと先月に不満を表明していたのだ。五輪を国威発揚に利用したかったのだろうが選手はどんな気分だったか。

ベラルーシのルカシェンコ大統領 ©getty

 ルカシェンコ大統領に関しては「強権」とか「弾圧」とかも出てくるが、一方でこんな面もあった。

《親しみやすさをアピールし、支持者から「バーチカ」(おやじ)と呼ばれるのを好むルカシェンコ大統領の演説は予測のつかない発言が売りだ。》(2021年5月9日・朝日新聞デジタル)

 なんか河村たかしを思い出しませんか?

 支持者に「おやじ」と呼ばれるのを好むルカシェンコ大統領と、「気さくな72歳」を訴える河村たかし。両者共通して打ち出すのは親しみやすさ。

 ここで気になったのは「おやじ」というキーワードです。