圧倒的な「仮面舞踏会」
──まさに本寸法の仕事、という表現が似合う。トシちゃんにしてもマッチにしても、その楽曲には、ちょっと外したオフビートな部分があったじゃないですか。
近田 少年隊は、ど真ん中の直球なんだよね。しかも、3人組だから、メンバーそれぞれの魅力を不公平なく表現したり、振り付けのフォーメーションとの関連性も考えたりしなくちゃならない。書き手にとっては、非常に高度なスキルが求められるアーティストなわけ。少年隊というプロジェクトは、作詞家、作曲家、編曲家、そして歌い手を含めた1つのユニットとして、文句のつけようもないプロの仕事が貫徹されている。
──グループ名からして、正統な嫡子のイメージが強い。シブがき隊とか、光GENJIとか、忍者とかには、ちょっとふざけた際物感があるじゃないですか(笑)。少年隊に関しては、ジャニー(喜多川)さんが本当にやりたいのはこれなんだなという本気度が感じられる。
近田 少年隊は、レコードにしても舞台にしても、二の線だもんね。
──少年隊のシングル曲では、「仮面舞踏会」の船山基紀さん、「君だけに」(作詞:康珍化/昭62)の馬飼野康二さんなどが、聴き手の印象に残る見事なアレンジを手がけています。
近田 今やだいぶ長いものとなったジャニーズの歴史の中でも、あの時代の少年隊の連作は大書されるべきものだったと思うよ。
──80年代の京平ワークスでは、C-C-Bも忘れることができません。アイドルとバンドのちょうど中間を狙ったようなキャラクターが絶妙でした。昭和60年にリリースされた彼らの出世作「Romantic が止まらない」(作詞:松本隆)は、中山美穂主演のドラマ「毎度おさわがせします」の主題歌。レコード会社のポリドール、音楽出版社の日音、そしてテレビ局のTBSが手を携えたメディアミックスの成功例と言われていますね。
近田 京平さんはこういう曲も書けるんだ、という驚きがあったよね。もともとの自分の引き出しには入っていない手札も、注文さえ来ればパッと出してみせることができる。
──その後、「Lucky Chance をもう一度」(作詞:松本隆/昭60)「空想 Kiss」(作詞:松本隆/昭60)「元気なブロークン・ハート」(作詞:松本隆/昭61)と、彼らの新しいシングルが発表されるたび、京平さんの汲めども尽きぬクリエイティビティにハッとさせられたものです。
近田 常に、自分を更新していくんだよね。