激動の駅「拝島」

 そんな形で戦時中に姿を消した五日市鉄道の立川~拝島間の独立線路だが、今では「五鉄通り」という名で残っている。拝島駅のすぐ南、5分も歩けば五鉄通りの入り口に出る。

 

 江戸時代には日光と八王子を結ぶ街道の宿場として賑わい、明治に入って青梅鉄道、五日市鉄道が開業して交通の要衝となってさらなる賑わいを得た。五日市鉄道は戦時中に“不要不急”として立川までの線路を奪われたが、西武拝島線の乗り入れもあって拝島の街は東京西部随一の交通の重要地となった。そして駅のすぐ北には米軍横田基地と、そこに通じる燃料輸送の線路……。とりたてて何があるわけでもない、郊外の小さな駅に過ぎない拝島駅。だが、そこにも確かに激動の歴史が刻まれているのだ。

 

写真=鼠入昌史

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