「既存3000基」のノウハウを活用する
「確かに日本では初めてですが、風車自体は世界から調達をすれば作れてしまう。北海ではもう3000本くらい建っているように、すでに存在しているものですから。むしろ施工するのが大変で、水深10~30メートルくらいのところに、高さ200メートル近い巨大構造物をいくつも建てるという大規模工事は、大型の海洋土木工事と考えてもらった方がいいです。ただ、それでもやはり世の中で初めてではない。そこが重要なんです。欧州では3000もすでに建てられていて、そのノウハウはあるわけですから」
それから3年が経ち、ようやく国が洋上風力に本腰を入れ始めた。これは、政府による長期ビジョンの策定という意味では、レノバにとって大きな追い風といえるが、一方で、政府のコミットメント強化による逆風もある。政府が洋上風力の「促進区域」を設定することで、その区域を30年間占用する発電事業者を公募する仕組みを取ったためだ。つまり、実際の事業開始には、政府の入札を勝ち抜かなければいけなくなったのだ。
今や、レノバが取り組む由利本荘沖の2区域を含め、促進区域に設定された4区域は、電力会社や商社、大手ゼネコン、さらにはオーステッドのような外資までも入り乱れて名乗りを上げる混戦状態となった。例えば由利本荘沖だけでも、(1)レノバ、東北電力など4社、(2)中部電力、三菱商事系ら3社、(3)九州電力、独RWE系連合、(4)オーステッド、日本風力開発ら3社、(5)JERA(ジェラ。東電・中部電の火力統合会社)、ノルウェーのエクイノールら3社など、これでもかとばかり大手企業が公募に参加している。他の2区域でも、また違う組み合わせで参入企業が入り乱れており、外資系メーカー幹部が「ここまで日本のエネルギー会社が本気で勝負しているのは見たことがない」というレベルだ。
公募は2021年5月27日に締め切られ、年末までには応札企業が選定される見通しだ。これはカーボンニュートラルを宣言した日本にとっても大きな試金石となるのは間違いない。
「我々は太陽光でもバイオマスでも、発電効率の高いプラントを作り、コストを下げる方法に習熟してきました。洋上風力も同じで、5年間の取り組みで積み上げてきたノウハウがあるので、これを成果につなげたい。洋上風力は情報公開を大事に、これを第2、第3段階での開発につなげて習熟させることで、コスト面でブレークスルーを起こしていく。そこが我々の貢献できるところです。さらに、単純なコスト削減だけでなく、グリーン産業を作ることも大事で、事業者としてサプライチェーン作りもやっていきたい」
レノバの木南社長は、公募締め切り直前の取材でこう意気込みを語っている。