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空き家戸数の半数は、賃貸用の空き家

 こうした結果起こるのが貸家における空き家問題だ。848万戸の空き家のうち、賃貸用の空き家は432万戸と、空き家戸数の実に半数を占めるに至っている。節税が目的化して、需給バランスに目を向けない貸家建築は、日本の住宅事情を歪んだ構造にしているのである。

 相続における不動産の評価体系を改めないかぎり、目の前の対策で頭がいっぱいになった地主たちによるアパート建設は止まることがないであろう。アパート建設業者も、これまでの成功の方程式が通用する限りにおいては、どこまでもこの戦略を採用し続けるであろうことは想像に難くない。

 

需給バランスが崩れ、賃料の大幅な下落へ

 未来に待ち受けるのが、老朽化したアパートとアパート内での空き住戸問題である。新築アパートが供給されるいっぽうで、需要側である若年層の人口は今後さらに急減する。需給バランスが崩れることは、賃料の大幅な下落を意味する。空室率の上昇は、アパートのスラム化を促進する。空き住戸の多いアパートは住んでいても気持ちが悪く、治安も悪化する。住環境の悪化を嫌う住民は他の新しいアパートに移り、懐に余裕のない住民だけがアパートに残る。当然賃料の引き上げには応じる余裕はないし、その気もない。住民層も若年から、もはや世の中の動きから取り残された高齢貧困層などに替わっていくだろう。

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 空き家問題の未来は、メディアが取り上げてきたボロボロになった一軒家やごみ屋敷状態の家の行方だけでない。撤去すればカタが付くだけの問題ではないのだ。これからの未来は、ひたすら作り続けている貸家=アパートがスカスカになっていく空きアパート問題なのである。

空き家問題 (祥伝社新書)

牧野知弘

祥伝社

2014年7月1日 発売