昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2017/11/30

ファーストクラスで来る外国人観光客が一番得する税金

 この税を負担する外国へ向かう日本人は1000円を徴収されるだけ徴収される一方、受益はあまり期待できない。空港での出入国の円滑化、パスポートの申請窓口の増設や在外邦人の安否確認の迅速化なども国際観光旅客税の使い道として検討されているようだが、全体に占める割合は限定的なものとなるだろう。

 外国人のみを対象として、日本人からは徴収しないという案も検討された。だが、各国と結ぶ租税条約などで「国籍無差別」の原則があり、国際社会からは理解が得られないとしてこの案は立ち消えとなった。

 アメリカで行われている電子渡航認証システムのESTAのような方法であれば外国人のみが対象となっても問題はない。ただし、この方法をとると手続きが煩雑になり、訪日旅行の阻害要因になってしまう。

 日本にやってくる外国人もすべてが十分利益を享受できるわけではない。訪日外国人数の約2割は、ビジネス渡航が占めている。国際観光旅客税の財源を用いて観光関連のために投資したとしても、ビジネスパーソンの受益は限定的なものとなるだろう。

 この税については、徴収金額が均一であるということにともなう問題点もある。 

 航空券の金額にかかわらず一律1000円であるため、250万円のファーストクラス航空券で日本とパリを往復しても、8000円のLCCで日本と香港を往復しても同額の1000円となる。250万円のファーストクラス利用者にとっては全体の0.04%にすぎないが、8000円のLCC利用者にとっては実に12.5%の値上げとなる。観光庁は若者の海外旅行離れへの対策としてさまざまな取り組みを行っているが、これでは焼け石に水となるだろう。

 結論からいえば、LCCなどを利用して近場の海外に出かける日本人が最もソンをして、海外からビジネスクラスなどの高額の航空券を利用して観光する外国人が最もトクをする税制ということもできる。

 現実的に徴収しやすいのが外国人も日本人も出国時に一律航空券に上乗せする(要はとりやすいところからとる)方法であることは理解できる。だが、この税についてはいささか受益者と納税者が乖離しすぎなのではないだろうか。

石井国土交通大臣(左)は11月10日の記者会見で「出入国の円滑化や利便向上のために広く薄く負担を求め ることは一定の合理性がある」と述べた

 11月22日から本格化する与党の税制調査会で議論した後、12月14日にまとめる2018年度税制改正大綱に盛り込む方針となっている。通常国会でこの法案について議論されることになるだろうが、国際観光旅客税のあり方や使いみちについても厳しく精査することを期待したい。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー