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ある地方の観光協会のプレゼンで思わず声を失った 

 数年前、ある地方の観光協会からコンサルティングの依頼を受けた。その地方は平成初期までは高原別荘地として賑わい、夏は学生を中心としたテニスやハイキング、冬はスキーなどのスポーツ合宿で潤ってきたのだが、近年は観光客の急減に頭を悩ましていた。

 私たちが出した企画提案は、その地のシンボル的な存在である美しい湖を題材に湖の周辺に木道を配置し、多くのフォトスポットを設けて自然に湖を一周してもらう。そして湖畔には健康と美容をテーマにした施設を用意して、湖を一周して渇いた喉と疲れた体を休めていただくような施設を設けるといったシンプルな内容のものだった。

 もはや学生のスポーツ合宿には期待できない時代、単身者やカップル、高齢者などにも範囲を広げ、湖で過ごす時間を演出するというのが私たちの提案趣旨だった。

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 このプレゼンテーションには観光協会のみならず役場の方々や地元新聞社の取材など多くの参加者が来て、会場は熱気に包まれた。ところが私たちのプレゼンが終了して質問タイムに入った時、最初に手を挙げた旅館経営者の質問に私たちは声を失った。

「あんたら、東京から来たんだから、西武とか東急とか呼んでくれるんじゃないの?」

「とってもよい提案だと思うな。素晴らしい。で、質問なんだが、これはいったい誰がやるんだ?」

 私たちからみれば、主役は地域の方々であるはずだったのだが、

「あんたら、東京から来たんだから、西武とか東急とか三井とか呼んでくれるんじゃないの? 誰がやるんだかわからないんじゃできるわけないだろが」

 と畳みかけられる始末。

 そしてそうした可能性がないと知ったとき、参加者たち全員の目が、会場の隅に腰掛けていた役場の担当者のほうに向けられたのだった。

「いや役場ではちょっと」

 地方創生の現状は、その多くが地方の人たちにとっては「東京者が来て好き勝手に適当なことを言うだけ」「役所は東京に行っておカネを引っ張ってくるのが役目」、そして「うまくいかなかったときは提案したコンサルと役所がだめ」という、すべてが他人事で行われているというのが実態だ。

小遣い稼ぎの出鱈目コンサル、言い訳ばかり考えている役所

 本来であれば、地元民に強烈な意思とビッグピクチャー(構想)があり、彼らのパッション(熱情)を感じ、これを企画実現するプロデューサー(別に東京者である必要はないが)がいて、最後に役所が応援する、というのが地方創生の図式であるはずだ。

地元民の強烈な意思と構想、熱情から始まるのが本来の図式のはずなのだが…… ©iStock.com

 ところが今のところ多くの地方創生の実態は、地元民にはアイデアもなく、やる気もない。コンサルは小遣い稼ぎのために出鱈目言って、できた後は東京に逃げて知らんぷりを決め込む。役所は中央からカネを引っ張ってきたことだけを自慢して、うまくいかなかったときの言い訳ばかりを考える。

 こんな状態ではどんなに看板を挿げ替えたところで、地方は所詮東京の真似をするだけで衰退の道から逃れることはできないのだ。