やっぱり、嫌だなぁ~と思った仕事に運があるんですよ
「その頃にね、レギュラーの話があったの。齋藤さんが『(局の上層部が)大将のところにお願いに来るから断ってね。毎週は無理だから』って。もしそうなってたら、短命で終わったでしょうね。紅白の裏という視聴率から最も“遠い”ところで始まった番組が40年以上繋がっていくんだから、わからないもんですね。だから、楽なのはダメなんですよ。(1975年に)最初、井原高忠さんに紅白の裏を頼まれた時、全く乗り気がしなかったけど、断っていたら仮装もないでしょう。やっぱり、嫌だなぁ~と思った仕事に運があるんですよ」
第98回を迎えた2021年2月6日放送の『全日本仮装大賞』で、萩本は唐突に「今回で私この番組終わり」と述べた。何も聞かされていなかった周囲は驚きを隠せない様子だった。ただ、2002年から共に司会を務める香取慎吾は萩本の『終わり』宣言について、ほぼ言葉を発しなかった。オンエアされていない場面や番組終了後、何か会話を交わしたのか。
「あの男もね、何も言わないね。私も理由は言わないし。帰る時に『慎吾、少なくともおまえを嫌いで終わるは100%ない! それだけ言っとく。おまえのこと大好きだからな。じゃあな!』って去りました。慎吾は何にも言わなかったね。本番で『終わり』とアドリブ飛ばした時も、俺の顔じっーと見てね。泣くでなく、怒るでなく、笑うでなく。特別な顔してました。でも、彼のマジの顔を見た。なんか良かったよ。じっーと見て。でも、なんにも言わない。お互いね、想像すれば良いという考え方なんですよ」
ピッタリな言葉を探していたら、“退く”(どく)という心境だった
萩本は本当に『仮装大賞』を辞めてしまうのか。
「“辞める”って言うのはさ、嫌なことや不満がある時でしょ。それは全くないですから。だから、あの時も“辞める”じゃなくて“終わり”と言った。その後、自分の気持ちにピッタリな言葉を探していたら、“退く”(どく)という心境だとわかった。電車の席で言うと、『どうぞお座りください』は“譲る”。黙って去ると“退く”。誰かが座るかもしれないし、座らないかもしれない。あとは、その言葉で想像してくださいと。そこからまた、仮装大賞の新しい物語が始まるんですよ」
紅白の裏で『仮装大賞』が始まってから42年。萩本は今年の大晦日どんな番組を見るのか。
「教育テレビ(Eテレ)でしょうね。誰も見てないチャンネル。BSとかね。みんなが紅白で盛り上がってる時に、どんなことをやっているのかなって。『大変なところでやらなきゃいけない気持ちわかるよ。降参するのがいいと思うよ』と心の中で言いながらね」
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