昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

genre : エンタメ, 読書

1億5千万円の提供、誰が決めた?

 被買収議員の問題と並び、読者からの声が多かったのが、自民党本部が河井夫妻に計1億5千万円もの資金を提供した問題だった。真相解明を訴える声が継続して寄せられた。

 まずは、これだけの巨額の資金提供を党本部の誰が決定したのかという疑問がいまだに解明されていない。

 この問題が発覚して以降、総理大臣や自民党幹事長の記者会見で、中国新聞東京支社の記者は関連の質問を続けてきた。全国紙が新型コロナウイルス禍の諸課題や政局を意識した質問を続ける中で、冷たい視線を感じることもあったが、愚直に質問を繰り返した。

 幹事長の二階俊博の放言もこうした流れの中で出てきた。質問したのは、21年3月に報道センター社会担当から東京支社へ異動した樋口浩二だった。

 参院広島選挙区の再選挙で敗北した翌月の5月13日、党県連会長の岸田文雄が二階と面会。1億5千万円について国民に明確な説明をするよう申し入れた。その4日後の17日にあった定例記者会見で、樋口は二階に対し今後の対応を質問した。

二階俊博氏 ©文藝春秋

樋口「参院選当時の幹事長だった二階さんは(岸田の)申し入れをどう受け止め、どう対応していくのでしょうか」

二階「1億5千万円が支出されたその当時、私は関係しておりません。ですが、関係してないから関係ないということを言うのではなくて、その事態をはっきりしておくために言っただけのことです。よくご意見を聞いて、今後慎重に対応していきたいと思います」

 樋口は「関係していない」と言い切った二階の発言に驚いた。想定外の回答だった。即座に、幹事長代理の林幹雄が背後からいつもの模範回答で割り込んでくる。

「1億5千万円に関しては、前々からご報告しているように検察の方から書類がまだ戻っていないものですから、戻り次第報告書を作成して総務省に届けるということになっておりますので、今しばらくお待ち願いたいと思います」

 樋口は林の発言に関係なく、二階の発言の真意をただす必要があると考えた。

樋口「1億5千万円の提供当時といいますと、19年の4月から6月にかけてになりますが、『関係ない』とおっしゃったのは、当時幹事長でしたが、どういった意味でしょうか」

二階「1億5千万の問題の支出についてはですね、私は関与していないということを言っているわけです」

 到底、納得できる答えではない。さらに尋ねた。

樋口「提供の経緯について、決定したわけではないということですか」

二階「まあ、それはその書類が返ってきてから、それを見て、よく誤りのないようにご報告をすればいいと、こう思っております」

樋口「関与の有無も含めてということでしょうか」

二階「もちろんそうですよ」  

 再び、林が割って入る。

「当時、幹事長であったのは事実ですけれども、実質的には当時の選対委員長がこの広島に関しては担当していたわけですから、そういった意味では、細かいことは幹事長はよくわからないということだと思います」

 参院選時の選対委員長は甘利明(71歳)。林は甘利の関与をほのめかしたことになる。樋口はすぐに会見でのやりとりを記事にし、翌日の紙面には「自民1億5000万円 甘利氏関与」の見出しが躍った。全国紙も同じような報道をした。

 その翌日、甘利は記者団に「1ミクロンも関わっていない」と、明確に自らの関与を否定した。図らずも自民党内の「責任逃れ体質」を露呈させることとなり、テレビの情報番組でも盛んに取り上げられた。

 結局、翌週の24日に党本部であった記者会見で1億5千万円の支出は「組織決定したもの」と軌道修正され、二階は自身と当時総裁の安倍晋三に最終責任があると言及した。具体的な意思決定の経緯には触れず、事態の収拾を図った格好だった。だが、克行と案里への破格の資金提供の「組織決定」を誰が差配したのか、という疑問は引き続き残った。

z