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つのる不信感

 なぜI弁護士はAから連絡を受けたその場ではねつけてくれないのだろうか。私が被害者だということを、なぜ分かってくれないのだろう。ただの痴話喧嘩に毛が生えたようなものと思っているんじゃないだろうか。刑事さんたちや検事さんだって、I弁護士よりはきっちり被害者として扱ってくださったんだけど。

 しかしなによりそんなことより。訳が分からないのは、元凶のAだ。不起訴処分からたった四カ月半で連絡を取りたいと堂々と言ってくる。どういう精神構造なのだろうか。示談の意味が分かっているのだろうか。

 Aは自分がしでかしたことを全く反省していないのではないかと思ってはいたけれど、どうやら本当にまるっきり反省していないということらしい。しぶしぶ示談に応じただけだったということなのだろうか。

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 I弁護士は、Aになんと言ったのだろう。メールの文面から察するに、少なくとも止めろとか、示談違反にあたること、違反行為には違約金が発生することを言ってくれたようには思えない。

 ならばAは、差し迫った用件であれば、連絡を取ることは可能なのだと思ったのではないか。禁断の一歩を踏み出すことを、助けたのではないか。また小豆島に来ることも、想定したほうがいいのだろうか。不安がムクムクと湧き上がる。

 ようやく平静を取り戻しかけていたのに。I弁護士の無神経な対応への怒りと、そして示談をものともせずに平然と私と連絡を取ろうとするAへの恐怖とが、同時に湧き上がってきた。

 叫び出したくなるのを堪え、徹底的に拒絶する旨の返信を絞り出すように書き、送信した。もしそれでも用件があるのであれば、弁護士を通して、しかも書面のみで対応するとは付け加えた。I弁護士からの返信はなかった。

 十日ほどは何事もなかった。が、とうとうAからLINEにメッセージが入った。普段LINEをほとんど使っていない私は、一瞬なにが来たのかよく分からなかった。AとLINEアカウントを交換したことも、Aのアカウント名すらもすっかり忘れていた。

 嫌がらせを受けたのは、フェイスブックのメッセンジャーだ。こちらはブロックしていたし、Aも警察で削除したと聞いている。電話番号は、着信拒否にしていた。なのにLINEアカウントが残っていたなんて!!! ああ、やっちまった。大失態である。