日本語でのコミュニケーションが増えた理由
――その鈴木選手でいうと、韓国戦のハーフタイムで相手チームのショットに対して「何をやっても決まる」的な発言をしていました。あんなにおおっぴらに対戦相手を褒めることはカーリングではよくあるんですか?
両角 あります。吉田知那美選手も終盤になって同じようなことを言っていましたけど、「Today is not our day」(今日はついてない)的な表現は英語圏の選手はよくします。カナダ男子代表のスキップで今回、銅メダルを獲得したブラッド・グシュー選手なんかは投げる前に、もし思い通りのショットにならなくてもという前提で「(It’s)Not the end of the world」(世界が終わるわけじゃないよ)とよく言いますが、個人的には前向きで好きですね。
――吉田知那美選手も、オプションやマージンといった言葉で競技を説明したりしますよね。
両角 カーリングは英語圏で生まれて育ったスポーツだから、用語はプレーしていてもやっぱり英語がしっくりくるんですよね。パス(石の通り道)とか、モメンタム(流れ)とか、日本語で言うより英語のほうがニュアンスが正しく伝わるんですよ。
――その一方で、今大会のロコ・ソラーレは「ありがとう」とか「上手!」とか日本語でのコミュニケーションが増えたのも特徴だったのでは。
両角 それは僕も感じました。どうしてでしょうね。機会があれば聞いておきます。これは僕の予想ですが、これまではJDリンドナショナルコーチも共有できるように、英語表現が多かった気がします。でもJDも日本でコーチングをはじめて今年でちょうど10周年なんですよね。だからカーリング競技内でのヒアリングはほぼ完璧に近いんじゃないかということで日本語が増えた気がします。
「かわいい」「この子」…アイスやストーンにも愛を
――なるほど。他にも知那美選手は「はじめましてのラインだから」みたいな独特の表現も多かったですね。
両角 使ってないラインについて「さっき使ってから長い月日が流れてー」みたいなのもありましたね。あのあたりの表現はロコらしいというか、他にも知那美選手は「かわいいアイス」と言ったり、吉田夕梨花選手もストーンに対して「この子はよく曲がってくれる子だから」とかよく言ってます。
――アイスやストーンにも愛があるんですね。その夕梨花選手はショット率91%を残しました。
両角 世界一のリードと言っていいと思います。本当にすごかった。僕も同じリードとして見習う点がたくさんある選手です。夕梨花選手や、男子の金メダリストになったスウェーデンのリード、クリストフェル・スングレン選手もそうなんですけれど、淡々と自分の仕事を確実にこなす姿はリードの理想のひとつだと思います。