足元には、人が膝を曲げたように見えることから膝根(しっこん)と呼ばれる「オヒルギ」の呼吸根が所狭しと発達し、まるでマングローブに侵入する人間を全力で転ばせようとしているようにも見える。
一見、上流の畑から流されたオクラや、誰かのお弁当から落ちたであろうタコさんウインナー風の植物も初めは不思議に感じたが、調べるとオヒルギの種であり、それを支えるガクだと分かった。ガクが赤い花に見えることから、アカバナヒルギともいうそうだ。
こうして川沿いには脈々とマングローブが生育している。石垣島の自然に畏敬の念を抱き、その手つかずの河川にルアーを投じた。
メッキ狙いでは5cm前後のキビキビ動くルアーを使用する。
ルアーを高速で動かすことで魚に見切られないようにするためだ。投げるたびに釣れそうという感覚が続いたが、これが意外と釣れない。夕マヅメ、離島マジックも消えかかり、現実と向き合う時が来た。
やはり2月、本土の河川より水温が高いとはいえ、1年を通して最も低水温な時期である。ならばと温かい海水の影響を受ける最河口に移動した。
旅くじで見えた新境地とは?
上げ潮に合わせて河川を遡上するメッキをイメージしてランガンすると、ルアーが引っ手繰られた。確実に魚信反応を得たので同じ場所に投げると、何度もアタリが出るがなかなか乗らない。
5度目の正直でやっとフッキングすると、小気味よい引きの末上がって来たのはメッキ(オニヒラアジの幼魚)であった。
「マジで嬉しい!」
思わず大声で叫んでしまった。
今はこのサイズだが、80cmまで成長して私では到底太刀打ちできない海の大型フィッシュイーターとなるのだ。塩焼きでいただくのは止めてリリースすることにした。
初めての地で魚を釣った感動は計り知れない。旅くじで得たかった釣りの新境地とは、まさに「初心」ではないだろうか。興奮が冷めぬまま、さらに2匹目も釣れた。
初日に良い釣りができた。
本来なら一旦満足して宿に戻り、オリオンビールを片手に石垣牛を堪能するはずだが、私にそのような世界線はない。日が暮れたので夜釣りを開始する!
写真=ぬこまた釣査団(大西)
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