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47歳で不妊治療を始め「子を持つ喜びを諦めないで良かった」43歳で不妊治療を悩んでいる人に産婦人科医が“今でしょ!”と言いたいワケ

『妊娠の新しい教科書』より #1

2022/04/20

source : 文春新書

genre : ライフ, 医療, ライフスタイル, 社会, 読書

note

胎児のストレス軽減を第一に考え、帝王切開を選択

 妊娠の経過が順調であっても、高齢での妊娠・出産には、やはりリスクがあります。妊娠10週を迎えた頃に出生前診断を希望されるかどうかをご相談したところ、ご夫婦のお考えで、出生前遺伝学的検査(NIPT)を受けることになりました。

 ご夫婦で遺伝カウンセリング外来を受診していただき、十分理解を深めていただいた上での選択でした。「ダウン症を含む染色体の数的異常はない」という診断が出てからは、それまで以上に安心して妊婦生活を過ごされていたようです。

 妊娠中には胎盤からいろいろなホルモンが分泌されるため、糖尿病的状態が生じることがあります。いわゆる妊娠糖尿病です。高齢での妊娠は、リスク因子の一つ。48歳の妊婦であるTさんも、妊娠糖尿病の診断を受けました。しかし、食事療法などで血糖値をコントロールし、これを克服。大事に至ることはありませんでした。

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©iStock.com

 無事に臨月を迎えた頃、分娩様式、つまり経膣(けいちつ)分娩か帝王切開かを相談させていただきました。45歳以上の出産には難産が増える傾向があります。加齢によって産道が強靭(きょうじん)に、つまり硬くなってしまうため、出産時には胎内から赤ちゃんを送り出す母体にも、産道を通り抜ける赤ちゃんにも大きな負担がかかります。

 Tさんは「赤ちゃんのストレスを最小限にしたい」という理由から、帝王切開を希望されました。

 出産時には49歳となっていたTさんは、2950グラムの男児を無事出産することができました。術後の経過も良好で、1週間後には母児ともに退院。Tさんご夫婦はもちろん、両家にとってはその子が初孫ということもあって、ご一族の喜びはひとしおだったようです。

 このコラムを書くにあたってご連絡をしたところ、「40代後半でも、子を持つ喜びを諦めないで良かった。いまなお不妊治療を頑張っていらっしゃる方、これから始める方に少しでもエールを送れれば」と、紹介することを快諾していただきました。

妊娠の新しい教科書 (文春新書 1358)

堤 治

文藝春秋

2022年4月20日 発売

47歳で不妊治療を始め「子を持つ喜びを諦めないで良かった」43歳で不妊治療を悩んでいる人に産婦人科医が“今でしょ!”と言いたいワケ

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