「妻は仕事が”ワンオペ“であることをよく愚痴っていました。洗い物をして、調理して、レジを打って……。『仕事量が多い、1人でこんなに対応できるか』と。妻は倒れた後、3時間以上放置されていました。もっと早く発見されていたら助かった可能性もある、そう思うとやはり悔しいです」
1月17日明け方、名古屋市にある牛丼チェーン店「すき家」で、パート女性の山田加奈子さん(仮名・58)が、1人で店舗を切り盛りする”ワンオペ“勤務中に倒れ、3時間放置された後、死亡していたことが「文春オンライン」の取材でわかった。加奈子さんの夫である直樹さん(仮名・46)が取材に応え、「妻の無念」を語った――。
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昨年12月に牛丼値上げも顧客のつなぎ止めに成功
「すき家の牛丼♪」のCMがなじみ深い「すき家」は日本最大の牛丼チェーン店の一つだ。親会社のゼンショーホールディングスがコロナ禍での営業時間短縮などの影響を受け、売り上げを思うように伸ばせずにいる中、「すき家」は2021年度の売上高で前年比109・5%を達成するなど、業績好調を維持している。全国紙経済部記者が語る。
「昨年、牛丼チェーン大手各社は、輸入牛肉の高騰を受け、主力商品である牛丼の値上げに踏み切りました。すき家も昨年の12月に牛丼・牛めしを値上げした。しかし、同じ月に鶏肉を使った新メニューを販売開始、これがヒットするなどして顧客のつなぎ止めに成功しました」
実際、「すき家」はコロナ禍で飲食業界全体が深刻な人手不足に陥るなかでも店舗数を拡大し、2022年4月現在で国内最多1940店舗を誇る。グループ全体ではパートやアルバイトを含め、10万人以上の従業員が働いており、親会社のゼンショーホールディングスはHPで「職場環境改善への取り組み 誰もが働きやすい職場へ」と題して、様々な取り組みを行っていると明示している。