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「そいつが何人殺していてもまずは受け入れる」30歳の青年が防弾チョッキで“紛争の最前線”へ赴く意外なワケ《これまで200人超のテロリストが投降》

NPO法人「アクセプト・インターナショナル」永井陽右さんインタビュー #2

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現場では命の危機と隣り合わせ

 もちろん紛争地域に入るということは、物理的な危険とも隣り合わせだ。

「現場では護衛を付けて、防弾チョッキとヘルメットを装備して行動します。行動パターンも読まれないように、常にルーティンは崩して、拠点から出るときは情報のクロスチェックも行います。国連機も出せないような最前線に行くときは武装ヘリで移動しますし、地上では装甲車での移動です」

護身用の銃をもつ護衛の人々(公式ツイッターより)

 では、なぜそんな命の危機と隣り合わせの生活を続けながら、現場に繰り返し足を向けるのか。

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「例えばソマリアなら、綺麗な海や見たことのない絶景とか、国のポジティブなところを楽しみたいに決まっています。なのに自分は、実際は“テロと紛争”という究極のネガディブに携わっている。脅迫や攻撃、バッシングなどに悩まされる日々でもあります。

 でもそれはあくまでも『テロと紛争のない世界をみんなで実現したい』からこそ。やるべきことを徹底的に考え、実行しているだけなんです。その自負と誇りは持っています。今は『好きなことして生きていこう』という時代なので、時代錯誤に思われるかもしれません。でも、むしろそういう時代だからこそ、そうありたいと思うのです。

ソマリアでの活動の様子 永井さん提供
ソマリアでの活動の様子 永井さん提供

人と人の間に可能性を見出せる

 現場でテロリストと呼ばれる彼らと向き合い続けていると、その関係性の中で見えてくるものがあります。途方もなく難しい問題だからこそ、人と人の間に可能性を見出せるのです。だから何度も会いに行く。そんな中で、みんな各々自分の新たな人生にチャレンジしていくのです。

 例えば、我々の支援を受けた20代のある青年が、レストランでウェイターとして再スタートを切り、最近サブマネージャーになりました。私が顔を出しにいった際、『これは自分からの奢り』とコーヒーをくれました。嬉しかったですよね。『更生したね』とかじゃなくて、ひとりの友人として嬉しいねと。他にも何もなくてもメッセージをくれたり、謎なTikTokを送ってきたりとか、そういう小さなことがとても嬉しいんです」