不自然な点は他にもある。多額の報酬を個人で得るより、法人で受け取るほうが、所得税の税率を各段に低く抑えられるにもかかわらず、なぜそうしなかったのか。あくまで一般論だが、総額2.5億円に対して、個人なら約半分が課税、法人の場合は3割前後だ。建築事務所を株式会社組織で経営しているC氏が、あえて個人として受取ることを選択した理由が釈然としない。
「機密情報を他に提供した」として事務職員2人を懲戒解雇
4月21日発売(4月28日号)の週刊文春で私が「疑惑のカネ」を報じてから1週間後、女子医大は事務職員2人を懲戒解雇した。「機密情報を他に提供した」などの理由からだった。むろん、退職金もゼロ。この時点で、女子医大は文春報道に対して、何も見解を示していない。そのような状況のなか、サラリーマンにとって死刑判決に等しい懲戒解雇を断行する姿勢に、職員たちは衝撃を受けた。内部からはこんな言葉が聞こえてくる。
「不正の疑いを内部告発した職員が、すぐに首を切られるなんて異常です」(40代看護師)
「いくらなんでも重すぎる処分です。懲戒解雇の撤回を求める署名を集めようと思ったのですが、職員たちは萎縮してしまって、協力を得られず諦めました」(事務系職員)
「内部監査室から『情報漏洩の警告』という文書が全職員に届きました。“警告”という抑圧的な言葉を使うところが、まるで北朝鮮やロシアの秘密警察みたいで、恐ろしい組織です」(30代医師)
連日のように聴取を実施、時には6時間にわたって拘束
実は、今年に入り、女子医大は内部監査室に元公安刑事などの警察OB、弁護士らを次々と加えて、体制を強化していた。これまでにも職員がメディアに情報提供をしていると考えたからだった。
また、元東京地検特捜部・検事の熊田彰英弁護士をアドバイザー役として迎えている。熊田氏は弁護士に転身してから、現金授受疑惑の渦中にあった甘利明元大臣の弁護人や、森友学園問題で国会の証人喚問を受けた佐川宣寿元国税庁長官の補佐人となっている。「疑惑をかけられた人物」にとっては、頼りがいのある、守護神というべきヤメ検弁護士だ。
捜査機関と化した内部監査室は、該当部門のパソコンや携帯電話、メモなどを押収。狙いを定めた2人の事務職員に対して、連日のように聴取を実施した。時には6時間にわたって拘束するなど、体力的にも精神的にも、大きなプレッシャーをかけ、職員たちを疲弊させていく。
聴取を終えて、女性職員が制服から私服に着替える際には、本人の同意を得ずに内部監査室の弁護士(女性)が、じっと監視していたという。さらに、帰宅時には女子医大最寄りの地下鉄の駅まで、元刑事が同行するという徹底ぶりだった。
そして、週刊文春で「疑惑のカネ」を報道すると、すぐさま2人を懲戒解雇したのである。