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 労働問題に詳しい大竹寿幸弁護士(東京法律事務所)は、情報提供を理由に職員を懲戒解雇にした女子医大の対応に疑問を呈した。

「職員が提供した情報は、具体的に不正が疑われる内容ですから、『公益通報の対象』になると考えられます。経営トップの関与が推察されるので、公益通報者保護法により『職員の懲戒解雇は無効』、または『解雇権の濫用』と司法が判断する可能性があるでしょう。本来、女子医大は懲戒解雇処分を決めるより先に、突きつけられた疑惑すべての真相解明をすべきではないでしょうか」

「ケネス社との契約手続きは適切ではなかった」と非を認める

 週刊文春の報道から50日後、ようやく女子医大は「検証及び調査結果に関する報告概要」という文書を職員限定で公開した。外部の弁護士を交えたというが、あくまで内部監査室による“主観的な”報告である。結論は次のとおりだ。

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「本件記事で指摘された点は違法・不当なものではないとのことであり、既に執筆した記者等に対して厳重に抗議しておりますが、今後然るべき法的措置を講じる所存です」(6/10付「検証及び調査結果に関する報告概要」より抜粋)

 全体に、週刊文春の取材に答えた内容と同じ主張が繰り返されていた。ただし、岩本理事長が贔屓にしていた、元宝塚トップ親族企業のケネス社との契約に関しては、手続きに問題があった、として非を認めている。

「ケネス社との業務委託契約の締結については、関係部署の不手際もあり、稟申(※)の手続を適切に経ていなかったことが明らかとなった。この点は、猛省されるべき点である 」(同上)※筆者注:「稟議の申請」の略と思われる

 この報告書では、誰が「猛省」するべきなのかは、明示されていない。本来は、業務委託の契約を承認した岩本氏ら経営陣の責任が問われるべきではないか。

岩本氏は、元宝塚トップスター・彩輝直と親交が深い(「女醫会」No.822より)

 週刊文春で「疑惑のカネ」が報道された直後、ケネス社は女子医大に対して4月末で契約解除の申し出を行い、受諾されていた。同社の契約期間は2022年末まで残っていたが、なぜ突如として契約を解除したのか、理由は判然としていない。

 新型コロナの感染拡大が起きてから、女子医大の医師や看護師はまさに命懸けで診療にあたり、多くの患者の命を救ってくれた。だが、その陰で、経営陣が多額のカネを仲間内で分け合うような行為をしていたとしたら、決して許されることではない。払拭されない数々の疑惑については、今後も注視していく。(了)