――ミドリガメは美味しくて、数もいる。でも、一般的には食べられていません。なぜ?
茸本 食べる習慣がないからでしょう。あとはさばくのが大変だから。味に関しては僕以外にも食べている人はいて、その皆が声をそろえて美味しいと言っているので、そこに関して疑いはないと思います。ただ手放しで美味しいかって言うと……カミツキガメの方がもっと美味しいので、ミドリガメ絶品! というほどまでは。しかし「なぜカメを食べるのか?」と聞かれれば、単純に美味しいからです。駆除目的でも何でもなく「僕が食べたいから」食べています。
――ミドリガメの下処理の大変さは、茸本さんのYouTubeチャンネルでも苦戦しているシーンがありましたね。
茸本 そうなんですよね。絞めてさばくハードルさえ超えられれば、カメやカエルは本当にオススメな食材なんですが。ミドリガメは首を落としてから、のこぎりで上下の甲羅の境目を切り、ドライバーを差し込んで蓋を開けるように開きます。あとはひたすら解体し、肉と内臓に分け、鍋やから揚げ、炊き込みご飯もいけます。ゼラチン質たっぷりで、うま味がすごい。鶏のから揚げよりも力強い味わいです。
――ミドリガメもそうですがホテイチクやカラスムギなど、外来種がたくさんですね。タマゾンと呼ばれるのも納得の状態でしたが、これからはどうなっていくと思われますか?
茸本 ますます外来種が増えていくだろうと実感しています。定期的に通っていて実感できるのは、やはり植物相の変化です。見慣れない植物が生えていて、これは何だろう? みたいなところから感じられます。小動物は、最近ニジイロクワガタを見つけました。ブリーダーが国内にいるので、商売を続けられなくて逃がしたか、単に逃げられたか。特定外来種でなければ飼育は禁止されていませんから、河川敷はペットを探している人にもいいかもしれません。意外とエキゾチックな生き物とかいますし。
茸本朗が野食を続ける理由
――茸本さんが野食を続ける理由は?
茸本 生態系の頂点にいるヒトとして、しかるべきふるまいをしたいからです。好きなもの、例えばマグロばかり食べるような行為は、生態系の頂点としてふさわしいと思えません。食べられるものを幅広く見つけ、情報提供することで、人々の興味が多少でも散っていけばと考えています。
しかも、都市部に住みながらでもそれが手軽にできる。節約を目的にしても、アウトドア的な楽しみでもいいでしょう。都市に住みながらもそれができる野食は、これからもずっと続けていきたいですね。
写真=深野未季/文藝春秋
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