「日傘を持つ男性が増えてきました、静かな流行になっています」

 毎年夏になると、そんな企画がワイドショーや朝の情報番組に登場する。ネットでも「本当に涼しいから男も使え」的なツイートやブログがひと夏に数度はバズり、好意的な反応がつく。ただ15年来の日傘ユーザーとしての率直な感想は「さすがに“流行ってる”は言い過ぎ、というかほとんど嘘では……」ということだ。

「男性の日傘が流行ってる」系の番組にはテンプレがある。新橋駅あたりで日傘を差したサラリーマンが登場し、最後はデパートの傘売り場で終わる。体感温度を計ったり、男性コメンテーターが「私も使っているんですよ」なんて付け加えるのも定番だ。コメントもおおよそ似通っている。

ADVERTISEMENT

表参道を日傘を差して歩く男性 ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

「永遠に日陰を歩ける」

「人にどう見られるかより涼しさが大事」

「男性向けのデザインも充実してきました」

 ただこの“日傘男子報道”、少なくとも15年くらい前から流れが変わってない。「静かな流行」のままで、一向に大きな流行にならないのも同じだ。

「増え幅はともかく増えてはいる」という現状

「男性も日傘を使おう」と長らく提唱してきた日本洋傘振興協議会事務局の田中正浩氏も、昨年の夏にこんなコメントを残している。

「2013年には“日傘男子”という言葉が流行語大賞にノミネートされたのですが、話題レベルに留まり、市場拡大には至っていないのが実情です」

©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 今年あらためて問い合わせてみたところ、製造・出荷数については集計をしていないと断ったうえで、「ここ数年は夏季の暑さを痛感し、年配の方は熱中症対策の道具として『健康的理由』から、若い方は日焼け防止や紫外線対策という『美容的理由』から日傘をさす方が増えていると思います」と教えてくれた。

 関東圏の男性用百貨店の代表的な存在である伊勢丹新宿 メンズ館の回答は以下のようなものだった。

「男性用日傘需要は年々増加傾向ですが、特に今年は需要が高まっています」

  共通しているのは「増え幅はともかく増えてはいる」ということだろう。この控えめな増加という傾向は、実感とも一致する。