最後は、
《「常識」や「普通であること」を見失っていく社会は「秩序」がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません。》
全編にわたって性的少数者に対しての差別を展開している。
貧すれば鈍する…なぜ新潮社は掲載したのか
私が驚いたのはこれを新潮社の雑誌が載せたことだった。先述したようにこの号の特集は「日本を不幸にする『朝日新聞』」でいわゆる朝日叩きだった。それ自体は珍しいものではない。朝日の記事にツッコミを入れたり朝日新聞社の醜聞を書くことは昔も今も週刊誌や月刊誌の十八番である。偉そうな新聞に対して雑誌側が放つカウンターは新潮社や文藝春秋社の鉄板芸だ。私も学生の頃からそれらを面白く読んでいた。それどころか「ここまでネタにされているなら原本(朝日)を読んだほうがもっと楽しめるのではないか?」と考えて朝日新聞を契約したくらいだ。
「新潮」対「朝日」、「文春」対「朝日」というマスコミ同士の応酬、言論のプロによる当てこすり合戦は見ごたえがあった。たまに朝日の反撃もあった。私は確かにプロの伝統芸を堪能していたのである。なのでそこに杉田氏レベルのものを載せてしまうと興覚めなのだ。日本を代表する伝統ある出版社が差別を拡散していることに驚いた。底が抜けたことを痛感した。雑誌が売れなくなったからだろうか、絵に描いたような「貧すれば鈍する」が切なかった(そのあと新潮45は事実上の廃刊となった)。
「女性はいくらでもウソをつけますから」
杉田氏の言動はそれだけではない。
2020年9月の党会合では、性暴力被害者の相談事業をめぐって「女性はいくらでもウソをつけますから」と述べた。女性からの申告に虚偽があるかのように受け取れる発言だった。かつて国会質問で「男女平等は反道徳の妄想だ」「男女差別は日本社会にはなかった」などと発言したこともある(毎日新聞社説8月18日)。
しかし杉田氏は「過去に多様性を否定したことも、性的マイノリティーを差別したこともない」と断言した。そのうち国民は忘れると思っているのだろうか。今回の人事では「性的少数者は種の保存に背く」という趣旨の発言をしていた簗和生氏も副文部科学相に就任した。