文春オンライン

「ダラダラと夢を見るのは良くない」入居期間は原則3年…“現代版トキワ荘”「多摩トキワソウ団地」がたった1年でプロ漫画家を輩出した背景

多摩トキワソウ団地 #1

2022/09/25
note

プロデビュー、連載獲得……1年足らずで生まれた数々の実績

 そんな多摩トキワソウ団地では、プロの漫画家やトキワ荘プロジェクト卒業生、編集者を招いた講座やワークショップ、出張編集部を定期的に開催し、入居者のスキルアップにつなげている。入居者同士の交流はもちろん、漫画家としての学びを得られるのが最大の魅力だ。

1階の共同フロアで入居者同士が交流している

 2022年8月時点で、団地内からプロデビューした人は3名、雑誌内の連載獲得者は4名、雑誌の読み切り掲載者は7名、各賞受賞者は8名。オープンして1年足らずで数々の実績が生まれている。漫画業界の関係者も、多摩トキワソウ団地の取り組みに注目しているそうだ。

「多摩トキワソウ団地をオープンした際に、大手出版社やプロ漫画家の方々から、SNSで『素敵な取り組みですね』『意義があることだと思います』などの反応をいただきました。こうした声は私たちの励みにもなりますし、注目されることで、漫画家を目指す入居者のデビューの足がかりになればと思っています」(菊池さん)

ADVERTISEMENT

日本全国だけではなく、海外からも入居希望者が

 また、多摩トキワソウ団地の周辺環境では、地域活動者や市内の企業などと共同活動を行うことで、漫画業界以外の人との交流も行っている。年に数回、外部の人向けにワークショップや展示会も実施している。

「こうしたつながりによって、地域の企業さんからご連絡をいただき漫画関係のお仕事に発展することもあります。経済的自立の支援となるので入居者にとっても、ありがたいことだなと思いますね」(菊池さん)

 

 多摩トキワソウ団地の様々な取り組みが、テレビや新聞などに取り上げられたことで、現在は入居希望者が殺到中。日本全国だけではなく、海外に住む外国人からも入居申し込みのメールが届くという。

 とはいえ、これだけ注目されている団地だ。申し込めば誰でも入れるというわけではない。まず応募条件として「本気でプロの漫画家を目指し、完成原稿1本以上を持ち込み又は投稿したことがあること」「適切な共同生活を営むことができ、かつ共同生活を通じて漫画家として成長できること」「賃料・管理費等の諸費用を遅延なく支払える等の、プロジェクトのルールを遵守できること」を挙げている。

関連記事