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職場のほかのメンバーに良い影響も

 企業の経営者・人事部門関係者は、賛否両論あるFランク大学出身者とどう向き合おうとしているのでしょうか。

「できれば採用したくない」という声が多い中、その存在を高く評価する意見もありました。

「入社2年目のFランク大学出身者が書いた手書きの文書を見たお客様から、『ふ』『ね』といった難しい平仮名の形が一定せず、濁点の位置もまちまちだと指摘されました。お客様は『いまは手書きをしませんからね』と笑っていましたけどね」

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 これは、ある住宅メーカーの人事部長のコメントです。しかし同時に人事部長は、“平仮名をちゃんと書けない彼”のことを評価もしていました。

「平仮名事件は社内で問題になり、私もずいぶん心配しました。しかし、その後この社員は、『まずは平仮名から教えてください!』とお客様の懐に飛び込んでいって関係づくりをし、素晴らしい営業成績を上げるようになりました。優等生ばかりでなく、こういうタイプの社員も必要なのだと痛感しました」

 また、職場のほかのメンバーに対して良い影響を与えているという指摘もありました。

「Fランク大学出身者には『22年間の遅れを取り戻すために、とにかく学べ』と言っています。彼らが懸命に学ぶと、周囲のメンバーが刺激されて『あいつに負けていられない』と学習するようになります。当社は学習する組織になることを目指しており、良い起爆剤になっています」(素材)

「当社では、優秀な人材だけを集めた職場よりも、優秀な人材と、優秀ではないけど頑張る人が混じり合っている職場の方が、断然パフォーマンスが良好です。お互いが補完し、刺激し合うということですかね」(金融)

 アリの集団で、働きアリが全体の2割、普通のアリが6割、働かないアリが2割になるという性質を「働きアリの法則」と言い、人間の組織にも当てはまると言われます。Fランク大学出身者も含めて多様な組織が、強い生命力を持つのでしょう。