「死後の世界はあるのか?」という問いに対して、古今東西の思想家や宗教家、科学者たちはさまざまな考えを述べてきた。しかし、その答えはいまだ明示されていない。一因には、これまで数百年存在してきた“「科学」と「宗教」の間に横たわる深い谷間”が挙げられるだろう。

 その谷間に理性的な視点からの橋を架け、21世紀における「科学」と「宗教」の融合を試みようとするのが、東京大学大学院を修了後、工学博士、経営学者として活躍する田坂広志氏だ。ここでは同氏の新著『死は存在しない』(光文社新書)の一部を抜粋。死後の世界についての田坂氏の見解を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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「科学」と「宗教」の間に横たわる深い谷間

 もとより、人類の歴史の中で、無数に報告されてきた「不思議な出来事」や「神秘的な現象」の中には、たしかに、単なる「錯覚」や「幻想」であったものも多い。ときには、意図的な「手品」や「詐欺」であったものも少なくない。

 しかし、それでも、やはり、それを単なる「錯覚」や「幻想」、「手品」や「詐欺」として切り捨てることのできない、信憑性や真実性が高い「不思議な出来事」や「神秘的な現象」があることも、厳然たる事実である。

 そこで、本書では、人類の歴史の中で無数の人々が体験してきた「不思議な出来事」や「神秘的な現象」というものが、現実に存在することを認めたうえで、そうした出来事や現象が、なぜ起こるのかを、どこまでも「科学的な視点」から論じたいと考えている。

 具体的には、近年、「最先端の量子科学」が提示している一つの仮説を用いて、人類の歴史始まって以来、謎とされてきた「宗教的な神秘」の解明を試みよう。

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 さらに、その解明を通じて、人類にとって最大の謎とされてきた「死後の世界」について、やはり「科学的な視点」からの解明を試みよう。

 そして、それらの試みを通じて、筆者は、これまで数百年存在してきた、「科学」と「宗教」の間に横たわる深い谷間に、理性的な視点からの橋を架け、21世紀における「科学」と「宗教」の融合を試みたいと考えている。