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 2013年に前社長の阪上雄司氏、現社長の森野博之氏らによって創業した乃が美。「トーストしなくても耳まで口溶けが良い」という食感が人気を集め、大ヒット。2018年には全国100店舗を突破し、売上は100億円を超えた。

 躍進を支えてきたのが、社内用語で「はなれ」と呼ばれる加盟店舗=FC店舗だ。約230店舗のうち、直営店はわずか16店舗。大半の店舗がFCなのである。

 2019年には、同社の経営面に大きな変化があった。東京の投資ファンド「クレアシオン・キャピタル」から出資を受け入れたのだ。

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「『クレアシオンとともに上場を目指す』とぶち上げた。発案は森野氏。阪上氏がそれに乗った形です。当時、乃が美の株主比率は森野氏と阪上氏で半々でしたが、2人は保有する株の約半数をクレアシオンに譲渡。それぞれ20数億円の売却益を得たと聞いています」(同前)

前社長の阪上雄司氏(本人のインスタグラムより)

 ところがこの頃、乃が美のパンの売れ行きに陰りが見え始める。翌2020年からはコロナ禍に突入し、店舗の売上は落ち込んでいく。FCオーナーにとっては、本部に支払うロイヤリティが大きな負担となっていた。

FCオーナーたちが要望書を提出するも…

「当初、ロイヤリティは売上の10%という契約でした。でも、売上が減る中、これを支払うと赤字になってしまう。本部とロイヤリティの引き下げ交渉を行ったのですが、『本部の収入が下がると、上場に差し支える』という理由で応じてもらえませんでした」(同前)

 経営陣に対して不信感を募らせていくFCオーナーたち。そして2022年2月、FCオーナーたちは「はなれの会」と称する団体を結成。本部に対して、ロイヤリティの減額や経費の削減を求める要望書を提出するに至った。しかし、

「本部からFC店舗にロイヤリティ分の資金が一度だけ補填されましたが、結局、10%という割合は変わりませんでした」(署名に応じたFCオーナー)

FCオーナーたちが本部に提出した要望書

 その後、社長を務めていた阪上氏が3月31日付で退任。食パンの開発者ら創業メンバーも次々と退社。“乃が美の創業の味”を知るメンバーは去り、会社には現社長の森野氏とファンド出身者らが残る形となった。