1ページ目から読む
2/3ページ目

4350万ドルもの“巨額送金”を巡る訴訟

 訴訟を起こされる理由となったのは、2012年に富士本社長が取締役会で提案し、実施したユニバーサルから香港の弁護士口座への4350万ドル(当時のレートで約35億円)もの巨額資金の送金だ。原告の株主A氏は〈取締役としての善管注意義務違反〉などを挙げて富士本社長に損害賠償金を支払うよう求めた。一方の富士本社長側も原告A氏を名誉毀損で反訴。今年6月に一審で双方の訴えが棄却され、現在、控訴審に入っている。

 裁判の中で、富士本社長が送金の正当性を示す証拠として提出したのが「取締役会議事録」だ。日付は2012年5月7日。当時会長だった岡田氏をはじめ取締役全員の捺印があり、書面決議が成立している。

富士本氏が裁判で提出した議事録

 4350万ドルの使途は「第1号議案」に〈中国の新事業開拓の一連の調査、企画、設計、提案、人脈、権利化のための一連の活動の委託及び支払い〉などと記されている。

ADVERTISEMENT

 この議事録に関し、小誌は新資料を入手した。それは、富士本社長が裁判に提出した議事録と同じ日付(2012年5月7日)の“議事録案”だ。内容はほとんどが書面決議された議事録と同一だが、4350万ドルの使途を記した「第1号議案」だけが、〈アルゼUSA,Inc.を含むユニバーサルグループの資産に対する攻撃行動に関し、ユニバーサルグループの資産を守るために有効な対抗策を実施する〉などと全く異なる内容になっている。

こちらが“幻の議事録案”

 実はこの議事録が書かれた2012年頃、ユニバーサルは米国のIR業者「ウィン・リゾーツ」と係争中だった(2018年に和解)。議事録案で記された4350万ドルの使途は“ウィン・リゾーツ対策費”なのだ。

 さらに小誌は議事録案を巡り当時の役員間で交わされたメールも入手。監査役から〈なにぶん調査としては高額な予算〉〈「成功報酬額及び調査活動費の総予算額を50億円」としていることの、計算根拠&適正性は?〉などと疑義を呈され、最終的に取締役会では同意を得られず、この議事録案は取り下げられた。その直後、「第1号議案」の内容が〈特許申請権の取得/中国の新事業開拓の一連の調査〉という全く異なる内容に変更され、書面決議は成立。送金が実施された。

 
 

 4350万ドルと巨額であるにもかかわらず、なぜこんな短期間で議事録の内容が書き換えられ、送金が実施されたのか。ユニバーサルを通じて富士本社長に取材を申し込むと、5人の担当弁護士が取材に応じた。