1992年にテレビ朝日に入社し、『スーパーJチャンネル』『報道ステーション』など数々のニュース番組や情報番組を手掛けてきた鎮目(しずめ)博道さん。独立した今は、テレビ局に27年間在籍した立場だからこそわかる内部事情を様々なメディアで論じている。
ここでは、鎮目さんがドラマやワイドショーなど業界の「裏側」を解説する『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)より一部を抜粋。韓国ドラマに比べて大きく後れをとる日本のドラマが抱える大きな問題とは——。(全2回の2回目/バラエティ編を読む)
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日本のドラマが韓国ドラマよりつまらない理由
かつて日本のドラマはかなり「国際競争力」がありました。フジテレビの「月9」などのトレンディドラマは、台湾や韓国、そして中国大陸でも大ヒットする時代がありました。「好きなタレントは木村拓哉と宮沢りえ」と、目を輝かせてアジアの女子がインタビューに答えるような状況が、ひと昔前にはたしかに存在したのです。
しかしいまや、日本のドラマは完全にその地位を韓国に奪われてしまいました。アジアでも世界でも話題になるのは韓国のドラマばかり。『愛の不時着』『梨泰院クラス』『イカゲーム』『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』などのドラマの世界的大ヒットが、世界じゅうから韓国に投資を呼び込み、豊富な資金力がまた次のヒットを生みます。
もはや制作力では韓国のドラマが圧倒的に日本を上回っている、というのが世界の一般的な評価として定着しつつあります。もちろんそういう面はあるのですが、制作力の問題より前に解決すべきこともじつはあります。
それは「ドラマの長さ」の問題です。あまり日本で話題になることはありませんが、日本のドラマは、長さが国際基準に合っていません。「帯に短しタスキに長し」という言葉がありますが、まさにそんな感じなので、世界のコンテンツ市場で相手にされていないという側面があるのです。
日本のドラマがいちばん売れるのは文化的に近いアジア地域ですが、アジアのドラマはどのくらいの長さが標準的だと思いますか? まず、中華圏のドラマはかなり長いんです。歴史ものだと50話を超えるものは当たり前で、70~80話続くものも珍しくありません。現代ものでも40話、50話というものがあります。しかもだいたい1回の放送時間は60分を超えるのが標準的。韓国はさすがにそこまで長くはありませんが、話数は16話くらいあるのが一般的で、1回の放送時間は70分くらいあったり、場合によっては90分を超えて映画くらいの長さがあるのも特殊な例ではないです。
それに比べて、日本のドラマはだいたい12話完結が標準的で、1話40~50分。最近では「期末期首特番」が必ずといっていいほど編成されるので、10話くらいで完結してしまうドラマもちょいちょいあります。「あまりに短い」ということで、アジア各国の放送局の枠が埋められないということになり、国際映画祭などに出品してもはじめから相手にされない、ということが増えてきているのです。
「短すぎて買いにくい」ということだけではありません。「短い」ということはそれだけストーリーを単純化せざるを得なくなりますし、1シーンごとの描写もディテールを細かく描いたりすることが難しくなります。ドラマがそのぶん“浅く”なってしまう。
単純計算すると、韓国ドラマが16話×70分で1120分。日本ドラマが11話×50分で550分ということになり、日本のドラマは韓国のドラマのおよそ2倍速でストーリーを展開させて完結させなければならないことになります。
これでは「日本のドラマより韓国のドラマのほうが、見応えがあるし描写も深い」と言われても当然ではないでしょうか? 日本のドラマ制作者たちの能力が韓国に比べて低いとは一概に言えない、ということがおわかりいただけたでしょうか?
日本で最近よく「面白い」と話題になるのは、NHKの「連続テレビ小説」と「大河ドラマ」ばかりではないでしょうか? 連続テレビ小説は1話15分が130回前後続きますので単純計算で1950分。大河ドラマは1話45分が1年間で50回として2250分もあります。やはりある程度の長さがないとドラマは面白くならない、というのは真理ではないでしょうか?