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――それは、日本の家庭は、女の人ばかりに家事・育児の負担がかかっているということでしょうか。

鈴木 日本人以外の家庭は、ナニーやお父さんと子どもが一緒というケースも多いんでしょうね。日本の場合、家事・育児を誰かに頼む文化がまだまだ根付いていないですし、自分で何とかしなきゃいけない気持ちが強い女性って多いと思うんです。でも、シンガポールのように、もっと外に頼ることが普通になればいいのに、と感じます。

「夫の付属品」としての立場に悲しくなったことも

――鈴木さんも今まさに、仕事と家庭のバランスを取ろうとしている?

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鈴木 まだまだ仕事と子育ての両立に関しては模索中で、霧の中にいる状態です。今33歳なんですけど、20代の頃はバリバリ働きながらやりたいように生きてきて、自分1人でできないことは何もない、そんな気持ちでした。でも、シンガポールに来てからは夫の付属品というか、常に彼に紐付けされないと生活できないことに悲しい気持ちになったことがあります。

――「夫の付属品」とは、たとえばどんな状況でしょうか。

鈴木 シンガポールで携帯電話の契約や銀行口座を開設した時、私のビザは夫の帯同ビザ(家族ビザ)ということもあって自分1人では契約できず、夫のパスポートが常に必要だったんです。だから、銀行や携帯会社にも夫と一緒に行ってもらって。しかも、私の場合ですが、携帯に関しては自分の名義で契約ができず、夫名義で私の回線も契約してもらう必要がありました。

――自分の存在が揺らぐ体験ですね。

鈴木 結婚して名字が変わった時も「今までの自分ではなくなるんだ」という悲しさがありましたが、それ以上に、「私の人権って何だろう?」と考えてしまうくらい辛くて。「ああ、これが外国人として海外に住むということか、日本に住む外国人の方もこういう苦しい思いをしているんだな」と思い知らされました。

シンガポールのカフェで過ごす鈴木さんとお子さん

――YouTubeでは、移住直後は「鬱っぽかった」と吐露されていましたが。

鈴木 生活様式の違いなどで戸惑いだらけの中、子どもを1人でみなくちゃいけない。駐在でパートナーに帯同するお母さんの多くがそうだと思うんですけど、女性が1人で家のことを整える場合が多いんですよね。我が家は、夫が在宅で仕事をしていますが、忙しくしているし、こっちに来てすぐは知り合いもいないから、正直、最初の頃は気持ちが落ちていました。

 駐在でいらっしゃる方は3、4年で赴任先が変わるため、シンガポールは常に新しい家族がやってくる場所なんですね。なので、毎日を不安に過ごしていたかつての自分がどこかに居ると思うんです。

――鈴木さんのもとにそういった相談がきますか。

鈴木 SNSを通じて連絡をいただくことがあります。私も来た直後は友だちもいないし、自分と同じように小さな子どもを連れて移住してきたという、同じ境遇の人と出会えるチャンスがなかなかなくて不安でした。パートナーと2人で来たのか、子どもの年齢によっても皆さん本当に悩みがバラバラです。

 かつての自分のような孤独を抱えた人が日々やって来る場所だからこそ、今後はそういうお母さんに寄り添うサポートができたらいいなと思っています。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。