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「みんな、ChatGPTの扱いがもったいない…」ほとんどの日本人がチャットAIを使いこなせていない“決定的要因”

ChatGPTのホントの話/深津貴之インタビュー #1

note

5兆語におよぶ単語の学習量

――将棋のAIに近いものなんでしょうか?

深津 ChatGPTは単に言葉と文脈のつながりを確率で判断しているだけなんです。学習してきた単語の中で「5三金」という文章のあとに「4六歩」という文章がたまたま超多かった場合を考えてみましょう。すると、ChatGPTは、良い手かどうかに関係なく、「5三金」にあわせて「4六歩」を指しやすくなってしまうと思います。

――出てくる答えが状況にあっているかは問わないんですね。

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深津 そのとおりで、そこが将棋AIとの大きな違いです。ChatGPTは、自我や意志で考えてはいなくて、常に確率上つながるかどうかだけを見ているんですよ。

 ChatGPTはインターネット中の言葉を5兆語も学習しています。そのうえで、確率上つながりやすい言葉をつないでみたら、人間らしい回答をはきだすようになった。それがChatGPTのおおもとの仕組みです。

――たしかに、ChatGPTに質問したときにあたかも人間かのような回答が返ってくるのには、まるで知性があるように感じられてとても驚きました。一方で、「直前の単語に対して、最も可能性が高い次の単語を予測している」ことがベースになっているのであれば、なんとなく平凡な答えしか出てこないような気もします。

深津 まさにそうです。平均的な答えが返ってくるんですよ。でも、平均的ということは、つまり人に質問した感覚で、ChatGPTが回答できていることでもあります。そのぶん、どんな人にどんな風に質問するのか、という発想が大事になってきますね。「医者としての立場で説明すると」といった文章で質問すれば、医療論文や医学書などの文章から学んだ、「医者としての立場で説明すると」という文章に続くありえそうな答えが返るためです。

風邪の症状と対処法を質問したときの回答
 ChatGPTに医師という役割を付与すると、先とは異なる回答が。聞き方によって回答が異なるというわけだ

――SNSではChatGPTを称賛する声も多いなか、逆に「こんな珍回答をした」といって、小馬鹿にするような声もありますよね。