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「グループサウンズがなんで滅びたかというと…」近田春夫と西寺郷太が語る、GSブームが短命に終わった“本質的な理由”

「グループサウンズがなんで滅びたかというと…」近田春夫と西寺郷太が語る、GSブームが短命に終わった“本質的な理由”

近田春夫さん、西寺郷太さん特別対談 #1

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, 音楽, 歴史, 社会

note

近田 残念ながら2014年に亡くなられたんだけどね。俺が手伝ったのは、けっこうグループサウンズの最後の頃で、いろいろなグループがどんどん売れなくなって解散していくような時代の中で。ワイルドワンズもいわゆるバンドの形でやっていくのもちょっと大変になって。急にジャクソン5の「ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ」を歌って踊るようなグループになったんですよ。メンバーも相当戸惑ってはいたとは思うけど。

西寺 かなりの路線転換ですね。

近田 そう。でも、当然うまくいくわけがなくて、すぐ解散しちゃったんですけどね。

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近田春夫さん ©文藝春秋

「裕福な大学生の審美眼」のような純粋さ

西寺 ただバックグラウンドを知ってから、よく考えてみるとワイルドワンズがポップなソウル・ミュージックに傾倒してゆく感じも理解できるというか。今の耳で僕がフラットに聴くと、ワイルドワンズの音楽が一番素直に好きになれるかもしれないです。

「ロック」と言うよりタイムレスな「グッド・ミュージック」と言いますか。ある種、後の「’90年代渋谷系」のミュージシャンたちにも似た「裕福な大学生の審美眼」のような音楽に対する純粋さを彼らからは感じます。ポリティカルなメッセージ性とかハングリー精神、上昇志向とも違う。

 タイガースやスパイダース、テンプターズにはもっと狂気的な一種の怖さみたいなもの、「ロックとは、ブルースとは何か?」みたいな、「生き様」のカッコよさ、パイオニア的な追求精神が伝わってくるんです。僕の世代だと、わりともうショーケンさんが個性的な役者になってからの世代なので。

近田 もう大御所っていうかね。

世界も日本も大きく変わった70年代

西寺 僕は73年生まれで、もうすぐ50歳なんです。それですら『太陽にほえろ!』『傷だらけの天使』みたいな若いショーケンさんをリアルタイムで見ていた世代じゃないので……。近田さんの『グループサウンズ』を読むと、GSが爆発した時期というのはかなり短かったという。丸5年ぐらいですか?

西寺郷太さん ©文藝春秋

近田 だいたい64年から70年いっぱいぐらいかな。だから長くて6年ぐらい。

西寺 昭和何年で書かれると、洋楽との関係性があんまりわからないんですが(笑)。1970年ぐらいにGSは終わりを迎えるということは、やっぱり時代がそこで大きく変わったということなんでしょうか? ちょっと前の考え方の否定というか。

近田 やっぱり新旧交代というのかなあ。69年から72年ぐらいの4年間のあたりって、とくに音楽に関してはほんとに世界も日本も大きく変わったねえ。まあ、世界はもうちょい前から変わっていたんですけどね。

西寺 大人が作った世界の否定みたいな。