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ビートルズの登場で音楽が変わった

近田 そこまではっきりしたものでもないんだけどね。いわゆる当たり前の話なんだけれども、まず60年代にイギリスからビートルズが出てきたのが大きくて。それまでは、いわゆる洋楽、ポップスというのはアメリカの音楽中心で、しかも職業作家の書くものが中心だったんです。ビートルズが出てきたことによってそこからいろいろな刺激を受けた人たちというのは音楽だけじゃなくて、ファッションだってそういうものがあったと思うんです。

西寺 音楽が、変わった。

近田 そう。ビートルズがそれまでの大成功したスター、たとえばフランク・シナトラやエルビス・プレスリーと違うのは、自分たちでお金を出して音楽スタジオを作ったこと。『リボルバー』のあたりからですけど、要するにスタジオ録音の面白さを知ったというか。

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©文藝春秋

西寺 そうですよね。レコーディング技術の進化もビートルズのおかげ。それまで技術者優先のものだったのを彼らが実際に莫大な利益をレコード会社にもたらした結果、アーチスト目線に変えたというところは大きいですよね。

近田 その海外の様子が、いろいろな形で日本まで伝わってくるじゃないですか。そのあたりから音楽を演奏する楽しさと別に、録音芸術としての音楽を表現する楽しさの可能性が見えてきたんですよ。

グループサウンズが滅びた理由

西寺 70年代にレコーディングをきちんとやっていくアーティストというのが認められるようになると、グループサウンズ的なつくられたものは否定されていくことになったんですか。

近田 グループサウンズがなんで滅びちゃったかというとね、もちろんレコーディング技術のこともあるけど、それ以前にグループサウンズをやっていた人たちというのが、よく言えばお人好しだったというのがあると思うんだよね。楽曲も基本、専門家に頼んでいたし。自分たちが女の子たちにワーワーキャーキャーと騒がれている中で、これから自分たちがどういうふうに展開していくかを考えていなかったというか。

西寺 前例がないですもんね。

©文藝春秋

近田 気がつくとだんだんお客さんも減っていくという。グループサウンズの人たちの中にも次の世代の音楽の中に入っていく人もいたけれども、ほぼみんな時代についていけない。やっぱり基本的にはミュージシャンになりたいという強い気持ちよりは、なんかカッコいいことやりたかったというか。

西寺 人気のレベルが今の芸能人と違いますもんね。女の子達が暴動レベルで車を追いかけたり囲んだりはしないじゃないですか、今は。当時は色んな誘惑も激しかったでしょうし。

近田 でも、それゆえのはかない魅力というのが俺らにはたまらなかったというのはあるんですけどね。