これが「格差社会の固定」であり、今の日本社会です。
格差が固定した社会では、下に落ちることはあっても、上にのしあがることは滅多にできません。
上の不安と下の絶望が過剰なバッシングの芽を生み、SNSという匿名のコミュニケーションツールにより露呈し、加速し、不寛容社会ができあがってしまったのです。
世界有数の「人助けをしない国」ニッポン
実は、冒頭の経産相の報告書には記載されなかった「ニッポンの絶望」があります。「世界寄付指数」、別名「人助けランキング」は英国に本拠を置くCAF(Charities Aid Foundation)が毎年行う世界調査ですが、日本はビリグループの常連なのです。
世界寄付指数では、過去1カ月間に「見知らぬ人、もしくは助けを必要としている人を手助けしたか(人助け)」「慈善団体に寄付をしたか(寄付)」「ボランティア活動に参加したか(ボランティア)」などの質問を設けています。
2022年は世界119カ国を対象に行われました。その結果、1位は5年連続でインドネシア、アメリカは3位、中国は49位で、日本はなんとなんとの119カ国中118位です。カンボジアと最下位を争いました。21年は114カ国中114位でしたから、 一歩前進? んなわけありません。
日本で働く外国人が感じる“目に見えない鎖国”
同様の結果はGallup 社が15年に実施した調査でも確認されています。「過去1カ月の間に、助けを必要としている見知らぬ人を助けましたか 」という質問に「はい」と答えた比率は、日本は25%で、調査対象国140カ国中139位でした(Global Civic Engagement 調査)。
日本人は優しい、日本人は親切、日本人は思いやりがある……。日本人の人間性は、とかくポジティブに語られがちです。日本人はたしかに親切です。例えば、外国人旅行者にはとても親切で、片言の英語で道を教えたりしている人をよく見かけます。外国人が「お客様」のときには、日本人独特の気づかいで親切にします。「なんてニッポン人は親切なんだ! ミラクル!」と旅行者たちは驚きます。
ところが、その外国人が「労働者」となった途端どうでしょうか。技能実習生への非人間的な扱いや、低賃金労働者としての雇い入れなど、隣人となった外国人には冷淡です。日本で働く外国人の知人が、「日本には目に見えない鎖国がある」と嘆いていましたが、日本人は旅人には親切でも、ともに暮らす「異物」や「見知らぬ人」には非情なのです。