イーロン・マスクも出資
チャットGPTの歴史は2015年、「全人類に利益をもたらす汎用人工知能(AGI)の普及・発展」を目指す目的でOpenAIという会社が設立されたところから始まる。
設立の発起人は、米国屈指のシード・アクセラレーター(ベンチャー企業の設立段階で出資するだけでなく、経営を指導して成長に導く組織)である「Yコンビネーター」の代表だったサム・アルトマン、電気自動車メーカーのテスラや宇宙開発ベンチャーのスペースXを創業したイーロン・マスク、電子決済の草分けペイパルの創業者でベンチャー投資の「ドン」と呼ばれるピーター・ティールら。10億ドル(約1400億円)が投じられた。
「全人類に利益をもたらす」という公益を目的としたため、発足当時のOpenAI Inc.は非営利法人だった。(2019年に営利法人のOpenAI LPを設立)
2年後の2017年、AI研究で世界の先端を走るグーグルが、大規模言語モデルのディープラーニング(深層学習)で使う新たなエンジン「Transformer(トランスフォーマー)」を発表する。OpenAIは、この「トランスフォーマー」をベースに2018年、「GPT-1」を開発した。GPTとは「ジェネラティブ・プリトレインド・トランスフォーマー」の略で、直訳すれば「生成型・事前学習・トランスフォーマー」で、ちゃんと製品名に「トランスフォーマー」が入っている。
GPT-2が2019年、GPT-3が2020年に発表されたが、大きな反響を呼ぶことはなかった。すでに馴染みのある対話型AIであるアップルの「Siri」やアマゾン・ドット・コムの「Alexa」と大きな差は感じられなかったからだ。
ところが2022年にGPT-3.5をベースにしたチャットGPTが公表されると、事態が一変する。まるで人間が書いたような長文をすらすら生成し始めたのだ。あまりの使いやすさに、サービス提供開始から2ケ月で月間アクティブユーザー(月に1回以上サービスを利用した人)が1億人に達した。月間アクティブユーザーが1億人に到達するまでのスピードはTikTokが9ケ月、インスタグラムが2年半だから、チャットGPTの普及がいかに爆発的かわかる。