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ジャニーズ性加害問題が放置され続けた“日本の残念事情”「男性同士だったか異性間だったかは関係のないこと」

内田舞×ふらいと「ソーシャルジャスティス」特別対談 #2

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会

note

内田 子ども自身がグルーミングに気づくのは難しいですよね。

ふらいと そうですね。ただ、未然に防ぐ取り組みも出てきています。特に最近、被害が多いのはSNS上で、コミュニケーションのなかで大人が子どもを信頼させて、猥褻な画像を送らせるといったオンライングルーミングが多く報告されているわけですが、そういった問題ある画像をキャッチするAIを導入するIT企業なども増えてきています。一方で、大人たちがグルーミングとは何か、子どもたちに教えることも大事だと思います。

内田 グルーミングという行為があるということ、それがどういうものかを知っておくことで子どもたちが気づく頻度は確実に増えると思いますね。

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ふらいと 大人にも伝えていかないといけないですね。大人も加害者側になることもあるわけですから。これはあるAV男優さんに聞いた話を、人から又聞きで聞いたんですが、AV男優の方って、例えば強姦シーンとかで勃ったりするわけですよね。だけど、このAV男優さんが性教育を学び直したところ、強姦シーンで勃たなくなったと言うんです。

 つまり大人でも性教育を学び直せば、認知を変化させることができる。実際に攻撃性も低くなり、性に対する認識も変化させられたことを物語る興味深いエピソードで、大人が学び直すのも大事なことだと思わせられました。

行動を起こさないと社会は変わらない

内田 メディアを通してだけでなく、実際に何を目にするかは耳にするかはとても大切だと思います。新しい話を聞いたり、多様なイメージに触れることで、今まで作り上げてきた固定観念が解きほぐされていく。家庭の中でどういう会話をするか、その一つひとつにも大きな意味があると思います。

ふらいと 日本は欧米と比べて性教育も遅れているし、小児性被害の認識も、制度化も法律整備も遅れているという感覚ですが、希望は女性たちの防犯意識の高さにあると思っています。割合的に見れば性被害は女の子、女性のほうが多いので、女性たち、母親たちの防犯意識は総じて高いんです。

 ただ、男性たち、父親たちからは「男の子の小児性被害なんて本当にあるの?」という言葉が聞かれるぐらい防犯意識がまだ低いのが実情で、これはジェンダーの問題ですよね。だから個人的には日本の小児性被害問題のキーは男性の意識をいかに高めるかにあると思っています。「うちは男の子だから大丈夫」といった認識を改めないと、社会全体で子どもを守ることはできません。

内田 これは何度でも言いたいのですが、被害者がどんなに声を上げても、それだけで大きな変化を望むのは難しいんですよね。もちろん声を上げてくださっている被害者の方々の勇気には何より感謝をすべきです。

 でも、今は被害者の人たちの肩に荷がかかりすぎではないかと思います。その被害者の人たちの思いに当事者以外の人たちが共感して、何か行動を起こさないと社会は大きくは変わらない。逆に言えば、実は当事者以外の人たちにもできることがたくさんあると思います。(最初から読む)

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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