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「藤井竜王が1時間長考? 早くも勝ちを読み切ろうとしているのでは?」

 藤井竜王の考えている姿そのものが相手への威圧感になるのだ。

2 常識を超える感性

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「普通はこう指すよね」

 感想戦等でよく言われる言葉。無難だから、前例があるから、人により理由は様々。だが、そんな常識に挑戦するのが藤井将棋だ。

棋士が脱帽するほどの信頼感

 今回の竜王戦第2局で現れた「7一金」もそれ。意表をつくようでも深い研究と読みに裏付けられている。奇をてらった指し方はせず、常にまっすぐなのだ。

3 正確無比の終盤力

 将棋の終盤は「悪手の海を泳ぐようなもの」とも言われる。4~5通りの候補手が浮かぶある場面。正解は1つだけで後は全部負け、これがひたすら続くのだ。

 藤井竜王は詰め将棋で鍛えた読みの能力により、終盤のミスが極端に少ない。

「藤井相手に互角の終盤では勝てない」

 ときにこんなことさえ言われる。その真意は、こちらは悪手の波に飲まれてしまうが、藤井は決して間違えないから。棋士が脱帽するほどの信頼感があるのだ。

現在は、名人位も獲得して「七冠」に ©文藝春秋

競争は激しくなるが、将棋界はますます活性化しそう

 タイトルが動いた竜王戦第4局の最終盤、実は難解ながら豊島将之前竜王にチャンスが訪れていた。

 究極の二択で選んだ手が結果的に敗着で、勝利の女神は藤井に微笑む。勝負のアヤは紙一重だとあらためて思ったものだ。

 まだ19歳、これからもタイトルを増やし続けるのは間違いなく、他の棋士からすると(藤井竜王を倒さねば自分たちの未来はない)との思いであろう。

 若きトップの誕生。競争は激しくなるが、将棋界はますます活性化しそうである。楽しみだ。

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 このエッセイは『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常』(文藝春秋)に収録されています。週刊文春連載を待望の単行本化。藤井聡太とのエピソード満載、先崎学九段との対談「藤井聡太と羽生善治」も特別収録して好評発売中です。 

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