7月19日、第169回芥川龍之介賞と直木三十五賞(いずれも日本文学振興会主催)の選考会が東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は市川沙央さん(43)の「ハンチバック」(文學界5月号)、直木賞は垣根涼介さん(57)の「極楽征夷大将軍」(文藝春秋)と永井紗耶子さん(46)の「木挽町のあだ討ち」(新潮社)がそれぞれ選ばれた。

 文春オンラインでは、近日中に受賞者のインタビューを配信する。

受賞者の経歴は…

 市川沙央さんは、1979年生まれ。早稲田大学人間科学部(通信教育課程)卒。2023年「ハンチバック」で第128回文學界新人賞を受賞しデビュー。芥川賞は初のノミネートだった。

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〈作品〉「ハンチバック」2023年文學界5月号、単行本は23年文藝春秋刊。

市川沙央さん

 垣根涼介さんは、1966年生まれ。筑波大学卒。2000年「午前三時のルースター」で第17回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞しデビュー。直木賞は3回目のノミネートだった。

〈作品〉『ワイルド・ソウル』2003年幻冬舎刊=第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)受賞。『君たちに明日はない』05年新潮社刊=第18回山本周五郎賞受賞。『光秀の定理』13年角川書店刊=第4回山田風太郎賞候補。『室町無頼』16年新潮社刊=第6回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、週刊朝日「2016年 歴史・時代小説ベスト10」第1位。第156回直木賞候補、第7回山田風太郎賞候補。『信長の原理』18年角川書店刊=第9回山田風太郎賞候補、第160回直木賞候補。

垣根涼介さん

 永井紗耶子さんは、1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。2010年『絡繰り心中』で第11回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー(単行本は『恋の手本となりにけり』と改題し同年小学館刊)。直木賞は2回目のノミネートだった。

〈作品〉『恋の手本となりにけり』2010年小学館刊、『絡繰り心中 部屋住み遠山金四郎』と改題の上14年小学館文庫刊。『旅立ち寿ぎ申し候』12年小学館刊、『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』と改題の上16年小学館文庫刊。『帝都東京華族少女』14年幻冬舎文庫刊、のち加筆修正の上『華に影 令嬢は帝都に謎を追う』と改題し21年双葉文庫刊。『広岡浅子という生き方』15年洋泉社刊。『横濱王』15年小学館刊。『大奥づとめ』18年新潮社刊、『大奥づとめ よろずおつとめ申し候』と改題し21年新潮文庫刊。『商う狼 江戸商人杉本茂十郎』20年新潮社刊=第40回新田次郎文学賞、第10回本屋が選ぶ時代小説大賞、第3回細谷正充賞受賞。第27回中山義秀文学賞候補。『女人入眼』22年中央公論新社刊=第167回直木賞候補。『木挽町のあだ討ち』23年新潮社刊=第36回山本周五郎賞受賞。

永井紗耶子さん

 芥川龍之介賞・直木三十五賞は、菊池寛(明治21年~昭和23年)が昭和10年に制定したもの。芥川賞は雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品、直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)のなかから、最も優秀な作品にそれぞれ贈られる。正賞は懐中時計、副賞は100万円。

 芥川賞は、「文藝春秋」9月号(8月10日発売)に受賞作全文と選評が掲載される。また、直木賞は、「オール讀物」9・10月合併号(8月22日発売)に受賞作の一部と選評が掲載される。

 現在の選考委員は、小川洋子・奥泉光・川上弘美・島田雅彦・平野啓一郎・堀江敏幸・松浦寿輝・山田詠美・吉田修一の各氏(芥川龍之介賞)、浅田次郎・伊集院静・角田光代・京極夏彦・桐野夏生・髙村薫・林真理子・三浦しをん・宮部みゆきの各氏(直木三十五賞)が務めている。

■第169回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)※作者五十音順・敬称略

石田夏穂「我が手の太陽」(群像5月号)
市川沙央「ハンチバック」(文學界5月号)
児玉雨子「##NAME##」(文藝夏季号)
千葉雅也「エレクトリック」(新潮2月号)
乗代雄介「それは誠」(文學界6月号)

■第169回直木三十五賞 候補作(出版社)※作者五十音順・敬称略

冲方丁「骨灰」(KADOKAWA)
垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文藝春秋)
高野和明「踏切の幽霊」(文藝春秋)
月村了衛「香港警察東京分室」(小学館)
永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」(新潮社)