文春オンライン

「1000件以上の医療機関が廃業を決めている」マイナ保険証の導入に嘆く、医師たちの“現状”とは?

荻原博子の「マイナ保険証の罠」#5

2023/08/25

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会

note

 新型コロナ患者は、通常の診療室で診療できないので、隔離スペースを別途つくって、そこで診断しなくてはなりません。そのためにはスタッフも費用も余計に必要です。新型コロナ患者を受け入れる設備を持てない小さな病院は患者が減って職員さえも雇えなくなり、最後は医師とその家族で頑張ることになったケースも少なくありませんでした。

 それでもなんとかコロナ禍を乗り越え、これから病院経営を立て直そうというという矢先に「マイナ保険証に対応しなければ、保険医を取り消す」と言われたのです。

「街の大きな病院なら、体力もあるのでなんとか対応できるでしょうが、僻村と言われるようなところで頑張っている先生方の中には、コロナで痛めつけられ、さらにカードリーダーまで導入して病院を続けるというのは、もう無理だと諦める方も少なくないのです」(竹田医師)

ADVERTISEMENT

国からの補助もあったが…

 カードリーダーの導入については、国からの補助もありました。ただ、それだけでは足りずに自腹を切らねばならないケースが多いうえに、国はランニングコストまでは出してくれないので、それも負担しなければなりません。

©AFLO

 導入にかかる費用は医院によっても違いますが、40万円から100万円。うち、10万円ほどが医院の負担となり、加えてランニングコストとして毎月1万~2万円かかります。

 さらに、高齢の医師のなかにはこうした機器の操作に不慣れな人もいますが、国も僻地の診療所までは使い方の指導にきてくれません。

 かつて「Dr.コトー診療所」(フジテレビ系)という人気ドラマがありました。東京の大学病院を辞めた青年医師が無医村だった島の診療所に赴任し、実直な人柄と医師としての技術によって村人の信頼を得ていくという物語です。