“ご近所付き合い”が希薄といわれる現代。「隣に住む人の顔も知らない」という人も多いだろう。しかし、まったく予想もしない形で近隣住民との接点ができてしまうケースは少なくない。今回は、隣人に迷惑をかけられた人々のエピソードを紹介する。

※写真はイメージです ©AFLO

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 大学への進学を機に秋田から上京した畑中実咲さん(仮名・26歳)は、初めてひとり暮らしをした家でトラブルに巻き込まれたという。当時、彼女が住んでいたのは3階建ての1Kマンションの1階で、間取りは7.5畳。家賃5万5000円の賃貸物件だった。

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「物件の3階には大家さんが住んでいて、時折お菓子をもらったり、世間話をしたりしてよく顔を合わせていました。大家さんも優しいし、部屋もキレイ。とくに不満もありませんでした」

 そんな折、畑中さんは約8ヶ月間、アメリカに短期留学をすることが決まった。留学中はトランクルームに荷物を移す等の方法も考えたが、引っ越しの手間や費用との兼ね合いから、留学中も部屋を借り続けることに。

「大家さんも住んでいる物件だし、大きな事件は起きないはず。そう考えて日本を発ちました」

 しかし、短期留学を終えて日本行きの飛行機を待つ空港で、母親から送られてきたのは「実咲の部屋が大変なことになっている」という写真付きのメッセージだった。

「母は、私の帰国に合わせて秋田から上京し、そのまま私の部屋に泊まる予定でした。しかし、送られてきた写真を見ると、照明カバーは床に落ちて割れ、床や壁に黒いカビがびっしり生えていて、泊まれる状態じゃなかったんです……」

フローリングの床にびっしりとカビが生えてしまっていた(畑中さん提供)

 空港で部屋の惨状を知らされた畑中さん。空の上では連絡も取れないため詳細が分からず、不安を抱えたまま帰国したという。

カビの原因は上階の住人の“水漏れ”

「日本に着いてすぐに母に電話をしたところ、上の階からの漏水がカビの原因だったそうです。私の部屋の真上に住んでいる人が、キッチンの排水口の詰まりを自力で直そうと試行錯誤した結果、漏水してしまったとか。私が部屋を空けている間に壁を伝って大量の排水が染み出てしまったのでは、と大家さんに言われました」

 長旅で疲れているのに、自分の部屋で休めないのはつらかったと畑中さんは振り返る。