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自分の中の葛藤とどう折り合いをつけるか

――これまで曲作りのガソリンとして焦燥、怒りがあった中で、成功を収めた今、新しいガソリンはもう見つかりましたか。

アフロ 今の話が結構芯を食ってるかも。選民意識みたいなもの、自分が裁くんだとか、思い上がりみたいなものに対して見つめ合う。あと極論に終始しないこと。例えば、キャンドル・ジュンさんの会見を見た?

――芸能記者と一対一で向かい合って話す会見ですね。

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アフロ ジュンさんは芸能のパパラッチみたいなことって、その部署だけの問題じゃなく、その会社に勤めてるみんなの問題なんですよ、考えてくださいと話していたけれど、あの話は芯を食ってる部分がやっぱりあって。

©佐藤亘/文藝春秋

 今日も「文春オンライン」の取材を受けさせてもらって、すごく楽しみに来たけれど、でも俺の友達のジュンさんのスキャンダルを扱って、彼の人生をめちゃくちゃにした会社でもある。まあ、全てがパパラッチのせいではないと思うけど。

 だから俺も文春とそういう人と一緒に仕事をすることには葛藤が当然あるんだよ。そこをどうやって自分で折り合いつけるか。誰かが悪いとかじゃない部分で悩んで、100%ではないけれど、確信に近い仕事をしていくしかない。

ラッパーは現実を歌いつつ、理想を見る

 ジュンさんの言ったことはすごく真っ当だったと思うけど、でもそういうふうに日本は、世界はできてなくて。人ってある程度なんかドロッとした、人の生活をのぞき見たいとか、知りたいとかっていうところもあるし。俺、「実話ナックルズ」好きだし。ワハハ。

 俺はそういう人間の汚さみたいなものをフォローしてくれるものを結構肯定していて。その中でサバイブだぜと思っているから、そこは軸として持ち続けたいと思ってる。

©佐藤亘/文藝春秋

 ラッパーはやっぱり現実を歌いつつ、理想を見る。俺は学校教育も本当はそうあるべきだって最近言ってるんだけど。道徳の授業で習うことは大事なんだけど、でも現実ってこうだよねって教える。

 じゃあその世界の中で、自分たちが幸せにサバイブしていくためにはどうしていきましょうかっていうのを、歌えるのが俺はラッパーだと思ってるの。

――音楽をやる人って焦燥感、満たされない思いがあって、それを原動力に成功する。でも満たされた後に、怒りを持てる場所を探すと政治であったり、思想に行きがちです。それもそれで悪くはないのだけれど、MOROHAはそこにはいかないのではと感じてます。