私が絶句して、例えば「これをやったらハマる」落とし穴の情報を伝えなくてもいいのかと聞くと、
「要らないよ。さっきの例だと、このエラーメッセージが出てるけど、なんか知ってる? ぐらいでOK。付加的な情報は聞かれたときでいいよ」
つまり、日本では喜ばれた情報がむしろ余分な情報になっていたわけだ。
最初から全部説明せず「情報量を減らす」
思い返せば、インターナショナルチームの人たちの会話は、具体的にはこんな感じだ。
「CIシステムでこんなエラーメッセージが出て困ってるけど、なんか知ってる?」
「ああ、これ前にもあった。この設定、今どうしてる?」
このやり取りでことがすめば、以上。もし終わらなかったら、
「調査が必要だな。このパラメータどうなってる?」
「こうしてるよ。よかったら、Pull Request のURL送るけど」
「いいね、見てみるわ」
「ちなみに、これやるとバグ踏むから、気をつけてね」
「ありがとう !」
といった感じだ。つまり、最初から全部説明せず、「情報量を減らす」コミュニケーションの仕方がすごく重要だったのだ。
それを知ってからは、会話の中で情報を盛り込み過ぎないよう十分気を使うようになった。
「その場で吸収できることを最大化」する文化
何かの技術を伝えるにあたって、パワーポイントで説明する場合でも、スライドの枚数を極限まで絞って、「これだけはわかって欲しい」と思う一点だけを説明し、質問が来たら追加説明するスタイルに変えた。これは良し悪しというよりは伝え方の文化なのだが、どちらが脳にとって本質的に楽かを考えると、慣れるとアメリカンスタイルのほうがはるかにストレスフリーだ。
彼らの背景にあるのは、「その場で吸収できることを最大化したい」というスタンスだ。複雑なものを一気に提供されてもその場で理解しきれないので、単純にリアルタイムに理解できる適切な情報量が好まれる。
インターナショナルチームでは、必要以上に脳に負荷をかけない伝え方がスタンダードになっている。
ただし、プレゼンテーション等に関して、日本人特有の仕事の習慣が有利に働く側面もある。
それは「準備」の力だ。先述してきたように会議でもチームへのプレゼンでも、アメリカ人はほぼ「準備」しない。その代わり何が来ても対応できるように、普段から反射神経を鍛えている節がある。その姿勢は見習いたいが、第二言語の英語である以上、非ネイティブが同じ土俵で勝負してもやはり戦闘力不足は否めない。