「政治」と「軍事」の本質が学べる古典とは?
6 『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング ハヤカワ文庫NF
二十世紀屈指の偉大な思想家による物理学の本。概念的な難解さはあるが、随所に盛り込まれたエピソードに畏敬の念を覚えずにいられないし、愉快な話も楽しめる。
7 『フェルマーの最終定理』サイモン・シン 新潮文庫
十七世紀に数学者フェルマーが残した数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」に、二十世紀の数学者が挑戦する。直角三角形の斜辺の長さをc、ほかの二辺の長さをa、bとすると、a²+b²=c²の三平方の定理が成り立つ(ピタゴラスの定理)が、フェルマーは2よりも大きな自然数nについて、an+bn=cnをみたす自然数の組み合わせ(a、b、c)は存在しないという定理を残した。この定理は確かだと、証明できるのだろうか?
8 『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス 紀伊國屋書店
「輝けるベストセラーであると同時に革命的な科学書」と称される本書は、ダーウィンの「生き残るのは変化に最もうまく対応できる者」という考えを超えて、競争は一人ひとりの行動のみならず、遺伝子の世界でも行われている、と説く。
9 『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』(上・下)ダニエル・カーネマン ハヤカワ文庫NF
どこからでもよいから、一度に五から十ページくらいずつ読んでみよう。ダニエル・カーネマンは二〇〇二年のノーベル経済学賞受賞者であるが、本書を読めば、なぜ人は思考の過程において愉快な間違いをいくつも犯してしまうのか理解できるし、自分はそんな間違いをいくつもせずにおそらくすむ。
10 『国際秩序』(上・下)ヘンリー・キッシンジャー 日経ビジネス人文庫
ヘンリー・キッシンジャーは一九二三年、ユダヤ系ドイツ人の家庭に生まれ、一家は一九三八年にアメリカ合衆国へ移住した。一九四三年に同国に帰化し、同年に大学の学業を中断してアメリカ陸軍に入隊、ヨーロッパ戦線の対諜報部隊軍曹として従軍。その後、リチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード大統領の大統領補佐官として五十年以上外交政策を掌握。キッシンジャーは多くの左派には冷酷な戦争仕掛人であり、民主主義の敵と思われている(一九七三年のチリ・クーデター画策は一例に過ぎない)。だが、これは歴史を作り出す方法を知る者による歴史の「ユーザーマニュアル」として読めばいい。ちなみに
『君主論』ニッコロ・マキアヴェッリ 岩波文庫
『リヴァイアサン』(1~4)トマス・ホッブズ 岩波文庫
『新訂 孫子』孫子 岩波文庫
の以上三冊は、どれもヘンリー・キッシンジャー『国際秩序』と同じ趣旨のもの。政治と軍事力の効力と限界について記されているが、古典であり簡潔である。
※(1)~(10)については、順不同です。