2015年9月に中山大学と中国科学院の合同研究チームが発表したところでは、この化石はピンナトウーリトゥス(Pinnatoolithus)の新卵種とみられ、恐竜が絶滅したK-Pg境界(中世代の白亜紀末期と新世代との境界)からわずか数メートル下の地層に眠っていたという。恐竜の時代が黄昏をむかえつつある時期に、運悪く孵化できなかったタマゴが化石化したわけだ。なお「ピンナトウーリトゥス」とは、タマゴの殻に付けられた卵属名である。
これは深圳の行政区画内ではじめて見つかった恐竜の化石だった。
現在、このタマゴ化石は市内東部の深圳大鵬半島国家地質公園博物館に収蔵されており、「今後は実物の展覧や動画のかたちで参観できるようにする」(『化石網』2018年9月5日付け報道)そうだ。
9歳少年の大発見
広東省で化石が多く見つかっているのが、深圳の北東140キロの場所にある河源市だ。ここは山がちな地域で、土地は痩せており、客家系の住民が多い。他地域への移民も盛んで、深圳の都市開発の初期に移り住んだ市民のなかにも河源出身者が少なくない。
2019年7月23日、河源市に住む当時9歳の小学生・張仰喆くんが母親といっしょに、市内を流れる東江の川辺で石を探して遊んでいたところ、例によって不思議な「丸い部分を持つ岩盤」を発見した。
「お母さん、これ、恐竜のタマゴじゃないの!?」
なんと、もともと恐竜好き男子であった張くんは、岩盤を発見してすぐにそう叫んだという。
母親の李小芳さんは興奮する張くんの様子を見て、この岩盤をスマホで撮影。友人を経由して動画を地元の河源恐竜博物館の職員に送ったところ、やはり本物の化石であった。
ほどなく、博物館の職員たちが現場に発掘におとずれ、タマゴ化石を含んだ岩盤、合計11枚の発掘に成功する。
一瞬で化石を判別した張くんの眼力が話題に
このタマゴ化石たちはおそらく約6600万年前のものとみられた。先に挙げた深圳のタマゴ化石と同じく、やはり恐竜が絶滅する直前の時代のものであった。
いっぽう、世間で話題になったのは、化石を一瞬で判別した張くんの眼力だ。学校の課外活動で博物館に行き、実物のタマゴ化石を見た経験があったことで、すぐにピンときたのだという。
中国メディアは「青少年への科学知識の啓蒙はやはり重要だ」と小学生の大発見をベタ褒めしたのだが、まさにその通りであろう。