1ページ目から読む
2/4ページ目

龍崎 すごく嬉しい感想をありがとうございます。起業に興味のある方たちからよく、飽きることは怖くなかったか?と聞かれるんです。例えばホテルなら、一度建てたら40年、50年そこに根を下ろして事業をするわけですし。コンサルタントは、3ヶ月とか半年とかひとつの業界のプロジェクトをやったら、次の業界の案件にいけるから、飽きないですよね?

メン獄 確かに、ものすごいスピードでプロジェクトに入っていくのは得意ですが、「勝てる」って思った瞬間に飽きてしまうんですよね(笑)。

メン獄氏

龍崎 賢い人は飽きちゃうんですよ。事業で肝心なのは実は「飽きる」問題だと思っていて、私がもしホテルを「好き」で始めていたら、とっくに飽きてしまっていたかもしれない。むしろ、「ホテルってなんでこんなに面白くないんだろう」という、幼少期にアメリカ横断旅行で強く感じた渇き――自分だったらもっと面白くできるのにという課題意識がベースにあるから続けてこれたんだと思います。

ADVERTISEMENT

「好き」だとマイブームと見分けがつかないので、それとは違う軸で「宿命めいたもの」とどう出会うかが肝心な気がしています。

コロナ禍で医療DXの世界に転職

メン獄 まさにそうで、良くも悪くも自由な環境下で、コンサルの仕事は「宿命」が定まっていない感覚が僕の中にはありました。一生かけて己が取り組むべき課題が誤魔化されてしまっている気がして。

 折しもコロナ禍が席巻するタイミングで、医療というバカでかい問題に取り組んでいる同世代の仲間に会えて、医療DXの世界に転職しました。医療業界の抱える問題は、健康なときはあまり気付かないものですが、お医者さんは目の前の患者さんに集中する中で、医療の仕組みをマクロで見て、未来につながるよう変えられる人間がなかなかいない。

 自分が歳をとってからでは変えられるパワーが残ってないから、そうなる前になんとかしたいという思いでスタートアップ企業に加わったんです。

龍崎 最近ちょうど『王の病室』や『ブラックジャックによろしく』など、医療業界に切り込む系の漫画を読んでて刺激を受けていました。

メン獄 面白いですよね。「コスパに合わないからやめます」と投げ出すわけにはいかない世界は。たくさんのお医者さん、看護師さんと会話する中で、自分がいかに資本主義に脳みそがやられていたかを痛感する日々です。

龍崎 私も産後ケアリゾートを運営しているので、ビジネスと医療の相容れなさを感じています。ビジネス側のスタッフも、お客さんを幸せにするために働いているけれど、実際目の前でお客さんのケアをできるわけじゃない。一方、医療職の方々は、お金の心配はしないで目の前の仕事に集中するよう育成されているので、両方のプロフェッショナルたちの視点を揃えて、働き方の環境を整えて、目指す方向をチームとしてチューニングすることがとにかく大変でした。

産後ケアリゾート「HOTEL CAFUNE」 ©水星