「結局、家庭の問題ちゃうの?」「まだこの問題やってるん?」
報告書を読んだ母親は、この報告書を大筋で歓迎しているという。
「一部の事実関係が違ったりはしていますが、自分たちがずっと訴えてきたことを大体は認めてくれています。これまで認めなかったのは、学校の非を認めたくなかったのでしょう」
ただ、もちろん不満は残っている。調査の過程で翔さんの同級生にアンケートをとっているのだが、母親はそれを読んで愕然としたという。
「子どもたちの意見が希薄すぎるなと思いました。そもそもほとんど白紙で、書いてあるものは全体の約1割。しかも教師たちの言い分を真に受けたのか、翔が悪いというアンケートも多くあります。『結局、家庭の問題ちゃうの?』『まだこの問題やってるん?』などの意見もありました……」
報告書では、学校の責任を認め、翔さんの苦しみについても言及している。
《教員が他の児童がいる教室の中で兄を名指しで指導したことは、他の児童及び保護者に向けて、兄が「変わった子ども」「問題がある子ども」であることをいわば学校が公認した形になり、同時に、当該児童(翔さん)についても「変わった子どもの弟」「問題がある子どもの弟」という眼で見られるきっかけを作った》
《自己所属感の喪失につながると同時に、学業不振からの将来への不安や母への自責の念、これらが不幸にも同時期に起こってしまったことで、当該児童(翔さん)にとっては幾度となく押し寄せる波のように、永遠に続くかもしれない苦悩に苛まれ、心理的狭窄に至り自死を決意することに至ったと考えられる》
しかしこの報告書は、あくまでも第三者委員会によるもので、まだ翔さんが通った小中学校や泉南市の教育委員会が認めたわけではない。
母親の戦いは終わっていない。
「(教育委員会が)認めませんよって言ったら終わりです。なので意見書は出そうと思っています。翔の死に責任があったことを具体的に認めさせるためにも、交渉はまだ続きます」