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 柳和樹と、鈴木大樹。いずれも石丸の小学校時代の級友だ。

 被告席に座る元担任・奥田達也(仮名)は、椅子に肘をもたせかけ、教え子たちには目を向けようともしない。傍聴席では、石丸の母・厚子が1人、証言台をまっすぐ見つめている。石丸本人は、一審の本人尋問で奥田とやりとりして以降、裁判所へ足を運ぶことはおろか外出もままならない病状が続いていた。

 石丸の代理人弁護士・今西順一が立ち上がると、まずは柳の証人尋問が始まった。

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 柳は、石丸のこの事件をいつ知ったかと今西に問われ、「今西弁護士からいただいたお手紙で知りました」と答えた。そして「今西弁護士とお話しした後、当時のクラスメートであったAくんと鈴木くんに連絡をいたしました」と続けた。

 Aさんとはどんな話をしましたか、という問いを受け、柳は核心に迫りだした。

“究極の腹筋”という名目で両足を……

「私はその時まで忘れていたのですが、奥田先生がAくんと当時のクラスメートのBくんを連れてキャンプに行った際、翌朝キャンプ場でBくんが泣いていたそうです。AくんがBくんにどうしたのと聞いた時には理由を言わず、帰りの電車の中で『ちんちんを触られたから泣いていた』と告白したと。当時そういう話があったな、という話をしました」

 泊りがけのキャンプは奥田による私的な旅行で、柳はこの話を中学時代に初めてAから聞いた。今のような性の知識がなく、教師の笑い話のひとつとして語られたものだった。

 奥田は表情を変えずに聞いている。柳が「AくんやBくんが他の誰かに話したかは聞いていない」と述べた時だけ、手元の付箋にメモを取った。

 奥田が全否定してきた体罰についても、柳は丁寧に答えていった。

「背中にビンタをする“もみじ”というのがありました。背中に平手の跡がしっかり赤く残って紅葉のようになるので、奥田先生本人がもみじと呼んでいました」

「僕は頬に思いきりビンタをされたことがあります。クラスメートの男の子は頬を平手かグーで(体が)飛ぶくらい強く殴られていました」

 同じく奥田が否定してきた児童を自宅に招く行為についても、柳は、あったと明言した。

「小学校在学中に何人かと遊びに行ったことがあります。車で行ったと記憶しており、牛肉のステーキと付け合せのもやし炒めの夕飯をごちそうになり、トランプのセブンブリッジをしました」

 そして、石丸と奥田の関係で記憶に残っていることについても具体的に述べた。