しかし、もう長らく社人も巫女も現れていません。はっきりとした理由はわかりませんが、移動手段や技術の発達によって、自然災害で人が死ぬことも、食べ物に困ることもほとんどなくなり、島民の誰かが“目覚める”必要がなくなったのかな、と思っています。

8月に行われる島内最大規模のイベントとは?

 毎年8月には、島内最大規模のイベント「牛祭り」も行われます。

 青ヶ島では昔から、牛は生活に欠かせない存在でした。本土で電車や自動車が普及して以降もしばらくは、牛に乗って移動したり、牛に荷物を運ばせたりしていました。また過去には各家庭で牛を飼っていて、その糞を堆肥として利用していたそうです。

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「牛」は青ヶ島の生活に欠かせない存在だ(写真=佐々木加絵さん提供)

 島の交通手段が自動車に代わった現代でも、牛の重要性は変わりません。例えば、青ヶ島の大事な産業のひとつに、「東京ビーフ」というブランド牛の飼育があります。東京ビーフは、年間出荷頭数が数十頭で、他のブランド牛に比べ圧倒的に頭数が少ないことから、「幻の黒毛和牛」と称されることもあります。

 青ヶ島では、人口約160人の小さな島の中に、東京ビーフを育てている島民が5人もいるんです。そんな身近な存在の牛に、感謝の気持ちを表そうと始まったのが「牛祭り」です。

5年ぶりに開催された青ヶ島の「牛祭り」の様子(佐々木加絵さんのYouTubeチャンネルより)

5年ぶりの開催で盛り上がった「牛祭り」の内容

 台風などの影響がない限り、「牛祭り」は毎年8月10日に行われます。でも、新型コロナウイルスの流行と台風の影響で、しばらく中止が続いていました。そして今年の8月10日、5年ぶりの牛祭りが開催されたんです!

 久しぶりの大きなイベントに、島は大盛りあがり。屋台のビールを飲んだり、青ヶ島の郷土芸能のひとつである「還住太鼓」の演奏を観賞したり、みんなで島踊りをしたりして楽しみました。