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主人公は一人ではない。ヒビの一つひとつに意味がある

 ここでガラスの天井を割るように見えるのはカマラ・ハリス大統領かもしれない。歴史に初の女性アメリカ大統領として名を残すのはカマラ・ハリスかもしれない。けれど、今までもヒラリーを含め、たくさんの女性たちの奮闘とその女性たちをサポートする男性たちの応援によって天井に少しずつヒビが入ってきたからこそ、実際にそれを割ることが可能になりつつあるのです。

 ヒラリーがいなかったら、カマラ・ハリス大統領が誕生する可能性は限りなく低く、彼女が数十年をかけてたくさんの傷を負いながらも、女性が大統領になる道があるという可能性を見せてくれなければ、今のカマラへのサポートもなかった。そのクレジットをほしいと思わないわけはないのに、それ以上に次の世代が自分の世代が成し得なかったことを実現できるようにと、全力のサポートを込めてバトンを託すヒラリーの姿は限りなく美しかったのです。

 私はこの姿に、コスパやタイパなどの言葉は使いたくありません。リベラルな運動は、短期的には「成功」という結果を伴わないように見えるかもしれない。叶わない理想のように聞こえることもあるかもしれない。しかし、もっと長い目で見れば、実はたくさんの結果を出しているのです。その多くは目立たないもので、必ずしも祝われないものであることは確か。しかしその一歩一歩の前進、あるいは一個一個のヒビが入ることがなければ天井は割れることができない。そのヒビの一つ一つに大きな意味があると私は思います。

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変化には長い時間がかかるーー夫婦別姓をめぐる同級生との会話

 例えば、その一つに夫婦別姓に関する議論があります。日本で話題のNHK朝の連続ドラマ「虎に翼」でも夫婦別姓がテーマになった回が放映され、寅子と寅子のパートナーである航一は寅子の姓を変えないために事実婚を選択するというストーリーが展開し、今もなお夫婦別姓制度が実現しない日本の現状、政治状況を照らす内容になっていたと聞きました。私の著書の中でもまた、夫婦別姓に関する議論が時代と共に変化してきたことにも言及しました。高校の同窓会で、同級生と夫婦別姓について忘れがたい、印象的な会話を交わしたのです。