大統領選で福音派が力を持つようになったのは…
入山 これからアメリカ大統領選と宗教についてお伺いしたいんですが、まず前提として私の理解はアメリカというのは85%ぐらいがキリスト教徒で、そのうちの半分以上の60%、70%ぐらいがいわゆるプロテスタント、残りがいわゆるカトリック。そして今の大統領選挙でいくと、共和党の副大統領候補に選ばれたJ・D・ヴァンスは、私が調べたところだとプロテスタントですね。ドナルド・トランプは一応プロテスタントで、キリスト教の中でも福音派の支持をだいぶ得ている。そういう構図だということをよろしいでしょうか。
池上 はい、福音というのは、「良い知らせ」という意味です。さらに新約聖書は4つの福音書と手紙などから成り立っているわけで、聖書に書かれていることを全て真実だと考えている人たちのことを「福音派」あるいは「エヴァンジェリカル」って言っているんですね。
入山 私、実は最近勉強したんですけど、この福音派は、カーター大統領やレーガン大統領の時代に政治力を持つようになったと。カーター大統領は民主党で、南部のジョージア州出身で、そのあたりは福音派が多いわけですよね。ところが、カーターは、妊娠中絶を認めるなど、かなりリベラルな施策を取り、それが福音派の怒りを買っちゃって、その次の大統領選で福音派が共和党のレーガン支持に回った。そこからかなり福音派と共和党の関係性が強くなっていったというのが、私の理解ですが、よろしいですか。
池上 その通りですね。つまり、そこから福音派は自分たちで政治を動かすことができるということを自覚して、大統領を選ぶ上で大きな力を持つようになったということだと思いますね。日本にも一生懸命選挙運動をする宗教団体がありますから、同じ構造がアメリカで起きているってことですね。