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「マグロはえ縄漁業は、江戸期の延享年間(1744〜48)に房総半島の布良村(現・館山市)で始まった日本の伝統漁法です」(責任あるまぐろ漁業推進機構)

そして、歴史あるマグロ延縄漁に革命を起こしたメイド・イン・ジャパンの漁労機械があることもわかった。それが「ラインホーラー」。マグロの漁獲に革命を起こした機械、「ラインホーラー」が世に出たのは1924(大正13)年。発明したのは泉井安吉。高知県室戸市で生まれた元漁師である。小学校しか出ていない安吉が作ったラインホーラーは日本だけでなく世界の延縄船のほぼすべてに装備された。今でも延縄の新造船ができると安吉が作ったラインホーラーの後継機が採用される。メイド・イン・ジャパンのラインホーラーは世界の海で活躍し、マグロを揚げた。

かつて延縄船は「後家縄」と呼ばれた

ラインホーラーをはじめとする漁労機械を製造する泉井鐵工所は高知県室戸市にある。室戸市は人口1万1400人。高知県の東の端にある。ちなみに西の端は足摺岬だ。高知市から室戸市までは車で約2時間。鉄道は途中の奈半利までしか通っていない。

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室戸は江戸時代から明治の初期までは鯨の町だった。その後、鰹、マグロの延縄漁が盛んになり、今でもマグロ延縄船の母港のひとつである。ただし、水揚げは室戸港ではない。室戸の船は近海でマグロを獲ったら、和歌山県の那智勝浦、千葉県の銚子、宮城県の塩釜に向かう。一方、遠洋の場合は主に静岡県の焼津、清水、神奈川県の三崎から出ていって、元の港に帰ってくる。それもあって室戸でふんだんにマグロが食べられるわけではない。地元の人たちは沿岸で獲れるキンメダイ、メジカ(宗田鰹(そうだがつお))などを食べる。メジカは傷みやすい魚なので、獲れた港の近くでしか食べることができない。アジのようなサバのような外見で刺し身にして仏手柑(ぶっしゅかん)(柑橘)を搾って食べる。白身の魚のような淡泊な味だ。